※ちょっと特殊。現在ある長編二種類の夢主が出てくる。三種類の短いお祝い話みたいな。
〜【二週間の奇跡】夢主の場合〜
「えっ!?今日って、真斗くんの誕生日だったの!?」
私は突然告げられた衝撃的な事実にポカンとしていると、私の目の前の小さな椅子でこれまた小さな湯呑からお茶をすすってる真斗くんはちょっとだけ嬉しそうな顔で頷く。
「また一つ成長したのだ」
「えー、わぁお……。ん、よっしゃ、それじゃあ今日のご飯はうんと豪華にしちゃおう!そうだな、真斗くんの好きなもの作ろうか。プレゼントは何がいい?なんならマフラーでも編んじゃおうか。あ、でもそれじゃあ公平じゃないし……。六人分のマフラー、毛糸代かかるし、時間かかるな…」
「ま、まて時雨。ええと…そ、そんなに大々的にやるものではない。ただ、その………」
私のマシンガントークを止めた真斗くんは、湯呑を握りしめてうつむいていたが、何かを決心したように頷くと顔をあげてこちらを見つめた。可愛い。
「ちょっとだけ、ほかの誰でもない、俺とだけ居てくれないか」
「……」
「だ、めか?」
全く予想していなかった答え。そして何となく美形オーラにやられキュンと胸が苦しくなった。キラキラと自然に輝く深い瞳に見つめられ、一瞬だけ硬直する。
私はゆっくりと手を伸ばして、真斗くんをすくい上げた。湯呑を受け取って机に置くと、思いっきりてのものを抱きしめる。ぐっ、と声が響いた。
「違う、ダメじゃないよ。ただあまりにも可愛かったから、驚いちゃっただけ」
「男が可愛いと言われても…」
「じゃあ、かっこよくてきゅんきゅんした!」
「……ん」
……どうしよう、鼻血が……。
真斗くんを手のひらに乗せたまま、ゆっくりと微笑むと、何をしようか。と相談を持ちかけることにした。
〜【貴方と紡ぐ幻想曲】夢主の場合〜
それは、彼らがまだ早乙女学園に入る前の出来事……。
「まっ、真斗さま真斗さま!うふふふふっ、とうとうこの日がやってまいりましたよ!」
「おはよう、時雨。今日もいい天気だな」
「ええ!絶好のお祝い日和でございますねっ!」
ひゃっほう!と荒ぶりながら真斗の部屋に突入してきた時雨は、両手に抱えきれないほどの荷物を抱えている。また、か。と真斗がため息をついた。
「まったく。本当は取次ぎたくないのですよ?でも真斗さまのご友学と申しますから、本当に仕方なく…。……また、とても豪華なお誕生日の贈り物でございやがりますね」
「敬語がおかしいぞ」
「おっと、やらかしてしまいましたわ。さて、この上辺だけのモノはどういたしましょう」
「時雨に任せる」
「それがよろしゅうございますね。カードもないとは、仮にもご友学を名乗るくらいならば……」
真斗が聖川財閥の御曹司という立場にあるが故、何かがあればこういう反応が周りから示される。少なくとも、まだ数年前までは、そこらへんの道端の花に、誕生日おめでとう、とかいたメッセージカード、と可愛らしいものが届いていたが、すでに今ではそんなものは影も形もない。しかし、そういうものだと真斗も、時雨も理解しているためそれ以上は言わなかった。
「……そうです、真斗さま。こちらのプレゼントはとても優しいものですよ?」
「それは?」
「わかっていらっしゃるくせに。冥加アキラさまと、浅野健二さまからのプレゼントでございます」
「アキラに、健二…か。ふふ、今年は何が入っているのだろうな」
「去年はたしか、真斗さまには見せられない御本でしたね。私が全力で処分した後、しば…お話をしにいったので、今年はマトモなモノが入っていると思いますよ」
「結局、最後まで入っていたものを教えてくれなかったな」
「知らずにいるのが一番かと。お願いですから聞かないでくださいまし」
すっと、プレゼントの中から小さな箱を取り出すと真斗に渡す。受け取って、開けてもいいかと尋ねるように時雨を見るので、苦笑しながら頷いた。
「……ふっ」
真斗は中を覗くと目元を和らげ、箱を閉じると机の上に丁寧に置いた。二、三回ほど箱を撫でる。
お邪魔か。と頭を下げて出ていこうとしたところを真斗が呼び止める。振り返るとすぐ近くにいた真斗が時雨の頭をぽんぽんと叩く。
「なっ、なんでございますか真斗さま!」
専属使用人だから、それなりの交流はあるとは言え、さすがに一介の使用人が、とぶつぶつ呟くのを無視して、時雨の後ろに積み重なるプレゼントを覗き見る。そこに、明らかに不器用にラッピングされてる箱を認める。
「それをくれないか」
「はい?」
「その青色の箱を」
「……ちょっと待ってください、あの、これはたまたま紛れ込んでしまった……!」
「去年は普通に渡してくれたのに、なんでなんだ?」
真斗が不思議そうに首をかしげた。
「あっ、あの頃はまだ真斗さまのことお友達的な目で見てて、すみません本当主従関係どっか行ってたんですよ!」
「今は?」
「見事に主と使用人の関係でございます」
「幼い頃からいつも一緒だったのに」
「真斗さまが男子校に行かれるから!…………まぁ、おかげで変な女性がつかづに安心しましたが」
「……今、何と言った?」
「いえ、聞こえてないのなら好都合ですそれでは!」
「こら、待て」
首根っこを捕まえると、時雨は大人しく動きを止める。あああああああ、と声が漏れていた。……不気味だ。
「……今更ですよ?」
「気にしない」
「不出来ですよ」
「気にするものか」
「なんか……アレですよ」
「いいと言っている」
「本当、後悔しますよ」
「しないだろう」
「…。わか、りました」
時雨は諦めたように箱を出した。真斗が開けて中を見ると、マフラーと手袋のセット。どちらも手編み…ではなく、黒の布製の手袋に青チェックの幅があるマフラー。
「…手作りなんて、今更ですもん」
ほんとうは手作りもあるのだけれども、流石に悲惨だったので自分で使っている。
「ありがとう、使わせてもらおう」
「真斗さま…」
「さぁ、今日はパーティに招待されていたのだったな。準備をしようか」
「はい、真斗さま!」
――――――――――――
というわけで二人分やらかしてみました。
真斗への愛をひったすら詰め込んでみましたが何か?
誕生日おめでとうあああああ!!!
遅れてごめんぬ。
12.12.30
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