「山田くん座布団全部持ってて」



※AS混合

「ねぇねぇ音也」

ヒソヒソと音也に耳打ちする。ここは音也とトキヤの部屋で、ただいまトキヤは図書館に行くと言って出ていったため、二人きりだ。

もちろん時雨と音也はそういう関係ではない。音也の部屋にゲームをしによく来るというだけである。もちろん、友人として、だ。

「どうしたの、時雨」

「あのさ、ここで提案なんだけど」

にやり、と時雨は笑ってから声をうんとひそめて言った。

「あのトキヤを笑わせてみようと思うんだが」

「トキヤを?」

「そう。あいつ、めったに笑わないじゃん?表情筋固まってんじゃない?ってくらいに無表情。ゆーとーせーですって感じでアレだからキャラ崩壊なところ見てみたいなーなんて」

「……たしかに」

「そこで、だ。どっちが笑わせられるか勝負しない?笑わせることはできなくても、表情が変わるところを見たい。クエストクリアできなかった方が週末の昼奢りってことで」

いいね、と音也が指を鳴らす。こういう悪乗りはお互い好きな方だ。腕が鳴る、と顔を見合わせて笑った。

あのトキヤを笑わせるのだ。そうとう力を入れねばなるまい。ああだこうだと考えを練っているうちに、トキヤが帰宅した。

「どっちから行く?」

「俺」

「オーケー。健闘を祈る」

グっと親指を立ててベッドに座る。音也は何をしてくれるのだろうか。

「トキヤ、」

「なんです?」

「俺………実はずっと前からお前のこと好きだったんだ」

「ぶはっ!!!!!」

どうだ!とドヤ顔待機の音也の後ろで、げほげほと激しく咳き込む時雨。どうやらトキヤではなく、時雨のツボに入ってしまったようだ。なんという俺得、と呟いて胸を抑えている。

「何を言ってるんです。頭は正常ですか?」

「うーあーうー……なんでもない。忘れて」

「それはもう、すぐに忘れさせていただきます」

「うぅ………」

音也が肩を落として戻ってくる。その頭をポンポンと撫でて時雨が立ち上がった。

「音也のかたき、とってくるよ…!」

怪しいものを見る目で見てくるトキヤに、時雨は笑いかけると右手を上げてこめかみの横でピースサインを作った。

そして一言。

「おはやっほ〜」

「…」

「…」

「…」

「…」

「…あの、」

「何も言ってくれるな、トキヤよ」

「貴方がたは何をしていたのですか」

「いや、トキヤを笑わせられたらいいなぁーなんて願望を持ちまして」

「座布団一枚すらもらえませんね」

「山田くん座布団全部持ってて」

そしてそれをトキヤに放り投げてもいいよ。

こうして、トキヤを笑わせようの会は目的を達成することなく、解散することとなりましたとさ。


――――――――――――
ごめん、ネタが無かった。
トキヤを笑わせるなんて、どうすればいいのだろうそうか今こそ春ちゃんの天然っぷりが発揮されるんだね!春ちゃんカモン!
12.03.24


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