「人の話を聞かないんじゃない聞けないんだ」


「燃える炎は勇気の証!アイドルレッド一十木音也!」

「明るい黄色は幸せを運ぶ!アイドルイエローなっちゃんです!」

「水の流れは癒しの心。アイドルブルー聖川真斗、だ」

「「「三人そろってAクラアイドル!」」」

シャキーン、という効果音とともにこの学園へと降り立ったのは、三人の美男子だった。一人は弾けるような明るさで周りを元気にする一十木音也。

もう一人はふわふわほんわかと癒やし系の空気を放つ(しかし身長高い少しくれ…じゃなくて)四ノ宮那月。

そしてもう一人はクールで知的な、しかしどこか熱い思いを秘めた聖川真斗。今日も三人は学園の平和を守るため、スタイリッシュに登校する……。

「ちょっと待て!!ちょっと待つんだ!!!」

「なによダム男」

「ダッ…!?そうじゃない、俺は上のセリフなんか言っていないぞ」

「そりゃそうよ。私が言ったんだもの」

「何故…」

「だってマサがめちゃくちゃ嫌がるんだもん」

ふふっ、と台本を丸めパシパシ手のひらに打ち付けながら時雨は笑う。真斗は少しひるみながらも、声真似や合成を駆使して作られたアイドルブルーが写ったスクリーンを指さしながら、さらに言葉を吐き出す。スクリーンでは戦闘シーンに入ったところで、音也や那月が楽しそうに撮られた自分達を見ている。

「どうしてこんなものを撮ろうと考えたんだ」

「ママンのにーちゃんに……シャイニーに言ったらやってみるといいデース、費用はこちらでもちまーす、って言ってくれたから」

「だからこんなに本格的なのか…」

真斗は頭を抱えた。思えば入学してからいつも、この時雨に……シャイニング早乙女の姪っ子に振り回されたばかりだ。

今ではすっかり音也や那月に真斗、友千香、春歌と仲良くなり、主に巻き込まれるのはこのメンバーだった。

「BGMは春ちゃん、友千香は悪の女王様。二人とも役目をしっかりと果たしてくれたわ!」

(二人とも災難だったな…)

「ちょっとマサ、聞いてる!?」

「ともかく、これはボツだ。まずこれは俺じゃないだろう、俺の名前じゃなくてもいいだろう!」

「ダメです」

きっぱりと言い切ると、台本をパラパラとめくった。自分の作った台本らしく、誇らしげに見つめている。

「Aクラ主要メンバーと言えばヤツらなんだよ。もちろん、アンタも」

「し、しかし……」

「マサは……イヤだったの?」

うるっ、と瞳に涙を浮かべて真斗の手を握る。う、とたじろいだ真斗を見て心の中でほくそ笑み、さらに詰め寄った。なんだかんだ言って時雨に甘い真斗は、説き伏せれば必ず参加してくれる。撮影時は逃げられたが。

「そ、んな目で見るな!ああもうっ、手を離せ!」

「……分かった」

ぱっ、と手を離した時雨を見て、助かったとため息をつく。あのままだったら受けていたかもしれない。

「やっとわかってくれたか、これで俺は、」

そう言ったところで、勢いよく顔を上げた時雨により先のセリフは止められた。

「マサも本当は出たかったんだね!だから真斗役に嫉妬しちゃったんでしょ!」

「何故そうなる!?」

「大丈夫任せて!そんなに言うなら撮り直すから!」

「違うっ!」

「そしてSクラも巻き込むから楽しみにしててね!」

「人の話を聞けぇええええええ!!!」


Aクラスアイドルコースの薄氷時雨
教師のコメント。
演技力、トーク力もあり通常授業でも成績は優秀です。交友関係も良好、明るくクラスのムードメーカーとして盛り上げてくれます。教師の手伝いも進んで行なってくれて助かりますね。ただ一つ、問題があるとすれば……。

人の話を聞かない。いえ、聞けないことかと。

「じゃーん、私の成績表」

(((((ああ、流石学園長の姪)))))


――――――――――――
こんなダムさま居たらお持ち帰りしたいですうへへ(^p^)
そういえば友千香の悪役っぷりを出すの忘れた。
演技力凄そうだからめちゃくちゃ似合うかもね!
12.03.24


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