きょうじゅろう君!10歳2


「……」
「宇髄さん、お久しぶりです。すいません、助けてもらって」
「……」

「あの宇随さん?」

非番なのかいつもの派手な化粧ではなく素顔の宇随は無言のまま顎に手を当てている。


「……いつの間にこさたんだ?」
ついこの間だろ、お前が辞めたのは。


「いや、この子は私の子ではなく…」
「お前の子じゃないなら誰との子どもだ?」

珍しく宇随が少しピリついた様子を見せる。
宇随は一般人や隊士、自分よりも妻の命を最優先で考えるほどの愛妻家である。そんな彼にとって浮気はきっと赦されざる裏切り行為なのだろう。


だんだんと慣れてきたこのやりとりとパターンに名前は「あのですね」と説明に入る。






「そうか、煉獄か!!そういえば親方さまから連絡が来ていたな!!」
誤解が解け派手に腹を抱えながら笑う宇随にひとまずほっとしながらも名前は変な違和感を感じた。
その違和感の原因に気づいたのは名前ではなく宇随だった。



「どうした煉獄?随分と静かだな」
「むう、そうか?そんなことはない!」
「そうか?まぁ、いいけどな」

久しぶりに会った宇随に簡単な近況報告を終えると宇随はまたな!といって人ごみに消えていった。
宇随と名前が話している間も、杏寿郎はどこか上の空で、本当に体調が悪いのではないかと心配になる。


「杏寿郎、ちょっといい?」
熱でもあるのではないかと心配になり額を合わせてみるが熱は無いようである。
「名前、やめてほしい!」

グイッと肩を押され、杏寿郎をみると少しばかり怒っているようで口調もいつもより少し荒く感じた。

「あ、ご、ごめん」
「っ、いや!俺の方こそ……、か、帰ろう!」



苦い顔をする杏寿郎に名前は戸惑いを覚える。
もともと大らかで朗らかな人柄である煉獄が任務や稽古中以外で語気を強めるのは珍しい。

何か言葉をかけたほうが良いのだろうか、と考えてもかける言葉が見つからず、先に歩いてゆく背中をただ追いかけた。

(20220120)



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