きょうじゅろう君!5歳


「戻りました」
「あっ、名前さん!よかった…洗濯物が散乱していたので、何かあったのかと心配してまし…」

千寿朗が夕飯の買い物から戻ると取り込みかけの洗濯物が風で庭に散乱し、名前の姿がどこにもなかった。
何かあったのかもしれないと将来の姉である彼女の身を案じ、父に相談するが取り合ってもらえず、外へ探しに行こうとしていたタイミングで名前が戻って来たことでホッと胸を撫でおろす。

玄関へ向かうとそこには名前と……。
「どなた、ですか?」

明らかに動揺する千寿朗にそりゃそうだよな、と名前は乾いた笑いを吐く。
煉獄槇寿郎の息子は杏寿郎と千寿朗の二人だけのずなのに、明らかに自分より幼い少年を名前が連れて帰ってきたのだから。

「戻ったぞ、千寿朗!」
「えっ?えっ?」
「杏寿郎、ちょっと静かにしてね」


しのぶから受けた説明をさらにかみ砕いて千寿朗に説明すれば若干混乱が残っているようだが理解はしてくれた。



◆◇◆◇◆



夜。

「うまかった!」
いつもの杏寿郎ほどではないものの、それでもおそらく同年代の少年の数倍以上は平らげたであろう。
空になった皿やお椀を盆において千寿朗と手分けして流しへ持っていく。


夕餉前、槇寿郎にも説明をしようとしたが、どうでもいいとだけ告げられた。
元は立派な柱であったという話は常々聞いたことがあるが、今は酒浸りで自暴自棄の槇寿郎。

この人に何があったのか、名前は知らない。
おそらく杏寿郎に尋ねればある程度の事情は教えてくれるだろう。しかしわざわざ聞くのも野暮というものなのでそれ以上は名前も深く詮索しないようにしている。




「これで最後です」
流しの皿を洗っていると後ろから千寿朗が残っていた皿をもってきてくれた。
「ありがとう」
「残りは代わるので、どうぞ兄上のところへ行かれてください」
「そんな、悪いよ」
「大丈夫ですから。きっと兄上も名前さんとお話したいと思います」
「…そう?じゃあ、お願い」


このお礼に、今度町にいったときは彼の好きなおせんべいを買ってあげようと思いながら杏寿郎の部屋の前で止まると一度座って入室の許可のために声をかける。

「杏寿郎、私だけど入っていい?」
「あぁ!」

襖に手をかけ中に入ると、いつもの寝間着を着た杏寿郎が任務の報告書を書いていた。

「……」
「どうした?中へ…」
杏寿郎が襖に手をかけたまま動かない名前に首をかしげる。


「〜〜〜〜っ、ふっ!」
我慢!我慢だ!!と名前は口もとを押さえて必死にこらえる。
にやけてしまう。

そう、杏寿郎はいつもの・・・・寝間着を着ているのだ。
177cmの身長の彼の寝間着を幼少の杏寿郎が着れば当然ずるずる、だるんだるんなわけで。


「可愛い、…!」
その姿はまだ早いかもしれないが、将来生まれるであろうわが子を連想させてしまう。
「可愛くなど…」

笑われたことに少し拗ねたような口調で反論しようとしたところで床に広がる裾を踏んでよろけた杏寿郎を見て、限界突破した名前は笑いながら杏寿郎を抱きしめて頭をなでた。

(20220120)



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