美音さんより誕生日プレゼントに頂きました!R-18兎虎小説です。美音さんのバニたんは本当にイケメン紳士で惚れます///




lotion magic



 キスを交わしているうちに何となくいい雰囲気になって、そのまま行為に雪崩れ込むというのは、恋人たちの間ではなんら不思議な展開ではない。バーナビーもその流れに従い、キスをしながら虎徹の腰に手を添えてベッドへと誘ったのだが――いざ目的地へ体を横たえさせると、虎徹はバーナビーの胸板をぽかすかと叩いた。

「…どうして叩くんですか」
「だって……このままするんだろ?」
「するに決まってるじゃないですか」

 まだ年若いバーナビーにとって愛情と性欲はイコールであり、切り離して考えることなどできない。況してや、相手は生まれて初めて恋をした――この二十年間、無意識に押さえつけていた肉欲を呼び覚ました人なのだ。頭の中は今、セックスをしたいという欲求で満たされている。
 憮然として答えたバーナビーに、虎徹は困ったように顔を歪めて、今日は駄目だ、と言った。

「どうして駄目なんですか」
「駄目ったら駄目だ!」
「それじゃ納得できません。何か、それ相応の理由でも?」

 頬をするりと撫でながら、問う。返答次第では諦めてもいいと言外に含ませて。
 虎徹は理由を言わない限り解放してもらえないと判断したのか、ふぅ、と溜め息吐いて、躊躇いがちに口を開いた。

「オジサンな、今非常にデンジャラスってやつなんだよ…」
「デンジャラス?」
「トイレ行くたんびに流血沙汰になってないか確認したりしてさ、もう気が気じゃないっつーか…」
「――何の話です?」
「…っ、だから、今にもあそこが裂けそうなんだって!」

 叫ぶように言う虎徹を軽く十秒は眺めて、ああ、とバーナビーは漸くその言わんとすることを理解した。

「つまり痔になりそうってことですか」
「お前なぁ!もうちっと情緒ってもんを……まぁいっか、ホントのことだし」

 デリカシーがなさそうに見えて、実は雰囲気を壊さないように遠回しに伝えようとしてくれていたようである。
 虎徹は諦めたように笑い、ほら、そういうわけだから退いてくれ、とバーナビーの胸をやんわりと押し返した。しかし、それなりの理由があれば諦めるつもりでいたものの、思わぬところで刺激的な話――あくまでもバーナビーにとっては、だが――を耳にしてしまっては、どうにも収まりがつかない。
 バーナビーは体全体で腕の動きを封じ込み、硬くなったものを虎徹の太腿にぐいぐいと押し付けた。

「挿入しなくてもセックスはできますよ?あなたの体で扱かせてもらえれば」
「ン、なこと言ったって……オジサン女の子みたいに挟めるお肉持ってないし…」
「あるじゃないですか。ここに」
「え?……あひっ」

 両側から臀部を掴まれて、虎徹がおよそ色気とは程遠い声を上げる。しかしそれに性欲を駆り立てられる程度には、バーナビーは虎徹に骨抜きにされていた。
 可愛い。早く、この人の肌を直に味わいたい。
 がっしりと肉を掴んだまま、バーナビーは虎徹の顔を上から覗き込んだ。

「セックス、させてください」

 答えは聞かずとも知れていたが、念のために伺いを立てておく。
 案の定、虎徹は仕方ねぇなと笑って、バーナビーの首にするりと腕を絡めた。

**********

 バスタオルを敷いたシーツの上、俯せた状態で横たわる虎徹の身体を跨いで、脚の付け根の辺りに腰を下ろしている。
 形の良い褐色の双丘、その間に挟んだ陰茎を前後に動かす度、透明のローションが尻の割れ目から会陰、太股の裏へと伝い落ちて、まるで愛液が溢れ出しているようだった。

「はぁ……」

 視覚から入る刺激も、快感に変換されて脳を甘く麻痺させる。
 バーナビーは掌で包んだ尻を中央に向かって揉みしだきながら、ふと、意識を虎徹自身へと戻した。
 下衣を脱がせるまでは、やっぱり切れたらこわいだの何だのと尻込みしていたのだが――いざローションを垂らす段になると、虎徹は途端に大人しくなった。いやだ、とも、いい、とも言わず、ただ黙ってバーナビーの行為を受け入れている。
 彼の尻で扱くのは好きだ。だが、独り善がりなセックスは本意ではない。ちゃんと二人で一緒に悦くなりたい。

「…虎徹さん…」

 急に心許なくなって、そっと名前を呼んでみる。
 それに返る反応はなくて――否、よく観察してみれば、バスタオルを掴む指が何かを耐えるように小さく震えていた。

「…虎徹さん?」

 身体の位置を上にずらし、肩に手を掛けて自分の方を向かせようとすると、虎徹は何故か顔をバスタオルに押し付けてそれを拒んだ。
 一体、どうしたというのだ。
 焦れたバーナビーが三度目の名前を呼ぶ。その声に観念したのか、虎徹はようやく顔を上げた。
 茹で蛸のように首まで真っ赤に染まった顔。心なしか、呼吸も荒い。
 予想外の反応に動揺して、バーナビーが僅かに後ろに下がる。その些細な動きにすら、虎徹の身体は敏感に震えた。

「まさか――ローションの感覚に弱いんですか?」
「んなわけねぇだろっ」

 威勢の良い返事だが、潤んだ目で睨め付けられても説得力は皆無なわけで。
 バーナビーは完全に普段の調子を取り戻し、口の端を歪めて笑った。

「知りませんでした。あなたがこういうプレイをお好きだったなんて」
「だ、だから違うって言って――うぁ…っ」

 ペニスの先端を背中の筋に沿って滑らせれば、虎徹の肩がびくりと揺れる。
 きっと、感じていることを知られるのが恥ずかしくてじっと息を潜めていたのだろう。しかし、正直な身体の反応は誤魔化しようがない。
 バーナビーはシーツに転がしてあった容器を拾い上げて中身を掌に出し、掌全体に塗り込んでいく。
 そうして液体が温くなったところで両脇から手を差し入れ、虎徹の胸を円を描くようにまさぐった。

「ちょっ……待て、バニー!」

 慌てたように、虎徹がバーナビー手首を掴んで制止する。それでも指先の自由が奪われたわけではないので、バーナビーは構わず爪の先で胸の突起を引っ掻いた。

「ヒッ…!」
「もう、立ってる。これでも好きじゃないって言うんですか」
「そ…れは……あっ、ほら、アレが冷てぇから生理現象で…?」
「ローションなら、ちゃんと人肌に温めましたよ」
「え?あれ…」
「……」
「……えーっと、嘘吐きましたゴメンナサイ」

 潔く謝って、虎徹は掴んでいた手首をパッと放し、罪滅ぼしのように掌を重ねてくる。
 その健気な仕草にクスッと笑って、バーナビーはほんのりと赤く染まった耳朶に唇を寄せた。

「僕はただ、あなたが悦くなることが知りたいだけです。これ…いいんですよね」

 言い様、触れたままだった乳首を滑る指先でぐにぐにと押し潰す。
 虎徹は切ない息を吐いて、まるで暗示でもかけられたかのように素直に頷いた。

「っん…こっちも、触れよ…」

 促されるまま、下腹部に右手を潜り込ませる。
 その先にあったのは、硬く芯を持って膨らんだ雄の象徴で――バーナビーは再びボトルを手に取り、十分な量を出してから、勃起したものの根元を握る。そうして搾るように手を動かすと、虎徹は身の下でびくびくと腰を震わせた。

「あっ…あぁ…あ…もっと…」

 もはや理性を失ってしまっているのか、虎徹が更なる快楽をねだるように腰を押し付けてくる。その拍子に、先走りに濡れた先端が尻の割れ目に擦れて、ぞくりと背中が震えた。
 本能に従順な虎徹があまりにも刺激的すぎて、もう、快楽を追うことしか考えられない。

「あ、あぁぁ…い、いい、それ…」
「虎徹さん…虎徹、さん…」
「あひっ…おまえのちんこ、擦れて……!」
「ああ…あなたのお尻、ぬるぬるで……もう、勝手に入っちゃうかもしれない、…っ、ですね」
「っえ…!?」

 虎徹が驚いたように振り返り、咄嗟に秘部を手で隠してしまおうとする。バーナビーは空いている方の手でその手首を掴み、シーツに強く縫い付けた。
 会陰から後孔、尾てい骨にかけてを陰茎で何度も往復する。ぷるんっと先端が滑る感覚にすら、虎徹は敏感に反応して腰を震わせた。

「ばに…そこ、だめだって…!」
「僕は、擦ってるだけ…ですよ…?」
「や、め……んっ、ナカ、入っちまう…からっ…んぁぁ…!」

 その嫌がり方が、バーナビーには「赤ちゃん出来ちゃうから生はダメ」と同等のものに聞こえて、どうしようもなく興奮する。
 …勿論、約束を破る気は毛頭ないが。

「大丈夫、です…あなたを傷つけるようなことは、しませんから」

 安心させるように囁きながら、それでも、沸き上がる劣情を抑えることはできない。
 バーナビーは虎徹の雄を一層激しく扱き上げ、押し付ける腰の動きを速めた。

「あ、あ…ばにぃっ…!」
「虎徹さんっ……お尻に、出しますよ…!」
「んっ、んっ…だし、て……俺も……あ、――ッ!」

 掌に、どくどくと脈打つ感覚。それに少し遅れて、思いの丈を尻の間で吐き出す。
 慎ましく閉じた蕾が、白濁に覆われて見えなくなった。

「はぁっ、は――」

 陰茎を何度か扱いて、尿道に残る液を残らず虎徹の肌に落とす。そうして様々な汁で濡れた虎徹の後ろ姿を暫く眺めてから、タオルを引き寄せてすべての滑りを綺麗に拭き取っていった。
 虎徹は俯せのまま、上がった息を必死に落ち着かせている。

「……虎徹さん」

 急にキスがしたくなって、その身体を仰向けにひっくり返す。
 上から覆い被さりながら唇を合わせると、にゅちゅ、と腹の辺りに虎徹の雄が擦れて、何ともいえない感覚が背中を駆け抜けた。

「ねぇ、良かったですか?」
「うっ……うん、まぁ…」

 歯切れの悪い声。どうやら正気に戻ってしまったらしい。
 それを少し惜しく思うが、恥じらう虎徹も、大胆な虎徹と同じくらい魅力的だ。
 バーナビーはにこりと笑い、背後に腕を回して、虎徹曰く「デンジャラス」な孔の縁を指先でなぞった。

「ここ、後で軟膏塗ってあげますから。完治したら、ローションプレイしましょうね」
「おまっ…俺を殺す気かよ…」

 虎徹の鋭い視線が突き刺さる。だが、それが拒絶ではなく照れ隠しだということをバーナビーは知っている。
 バーナビーはもう一度虎徹の唇にキスを仕掛けて、業務用のローションってどこで入手できるのかな、と涼しい顔で考えた。