勝てば官軍負ければ賊軍 | ナノ
ここはどこだ?俺は確か変なことを言うキチガイに会って、目眩して、倒れたのか?

周りを見ても白い空間しか見当たらない。あの変な奴に連れてこられたのだろうか。見る限り出口も入口も家具も窓さえもない。
「あら、起きたのね」
いつの間にか目の前に女性が立っていた。男と同じ白い服を来た女性。女性は手に何かを持っていて、それを俺の目の前に差し出す
「はい、アイツから預かったものよ」
渡されたのは水彩絵の具と筆と水が入ったボトルに大きな紙が入った大きなカバンと俺が親友からもらったバッジだった。アイツとは恐らく白い男のことだろう。バットまでちゃんとある。でも頼んだ覚えも見た覚えもない50cmくらいの箱も一緒にあった。
「その箱は貴方への贈り物、だって。開けてみたら?」
女性に言われたとおり箱を開けるとそこには何とも言えない気味の悪い人形が入っていた。一緒に入ってた紙を読むと-この子は自殺人形、そっちの世界でのパートナーとして一緒にいてあげるといいよ!
ちなみにその子は結界を張れるから結界を張りたい時は「Tote de contract.Debut」って言うといいよ。
結界を消したいときは「Contract fin」って言うか、5分経ったら勝手に消えるから!-と書いてあった。結界が必要になるときがあるのか?
「じゃあこれ、あげる」
渡されたのは変な球が付いてる拳銃のようなもの二つと30cmくらいの小刀のようなものだった
「この世界には貴方のいた世界とは違う魔物という存在があるの。それから身を守るのに使いなさい。その缶バッジは武醒魔導器になってるから魔法も使えるわ、向こうでいろいろ学びなさい」
ぼーえぶらすてぃあと言う単語に首を傾げながらその武器とやらを受け取る。もうここまで来てしまったのだ、信じれないわけがない。心の底にある小さな、これは夢かもしれないという希望すら宛にはならなかったが、不思議と不安にはならなかった。
「貴方はもう清水悠希として生まれてしまったわ、だからその名前を語って生きなさい。もう会うことはないでしょうけど、お元気で。さようなら、行ってらっしゃい。」
女性はそう言うと俺の額に指を当て何かをブツブツと呟いた。また意識が遠のく。次目を覚ましたらどこにいるのだろう。



「…?」
気づいたら暗くて細い道に立っていた。どこかの町なのだろうか、遠くに見えるのは見慣れない建物や民族衣装のような服を来た人々だった。
「…あぁ、なんだ、夢じゃねぇのか」
ショックは少なかった、それでも少し悲しいのには変わりがなかった。自分の服装はジャージに右手にバット、スニーカー。肩に大きいショルダーバッグがかかっていた、中にはきっと絵を描く道具や拳銃やナイフが入ってるんだろう。しかしこれは困った、自分の服は明らかにこの世界に合っていない。傍から見れば不審者だろう。しかし行く宛などないしどうすればいいのかもわからないのでただ立っている。
不意に壁に貼り付けられているチラシの様なものを見た。文字が、読めない。そこらへんはやはり配慮してくれないのか神様よ、中途半端だ。言語を理解できなければ相手が何を言ってるのかもわからないんじゃないのか。不安になってくる。数字は元にいたあの世界と同じだが。
いつまでもここにいては何にもならない、少し歩くか。そう思って歩きだそうとした瞬間いきなり声をかけられた
「待つのであーる!ユーリ・ローウェル!!」
声の方へ向くと長身の鎧を纏った騎士みたいなのがいた。多分騎士だろう。言葉がわかったことに少し安心した。
「なんだその服は!変装したつもりか?バレバレだぞ!」
よく見たらちっこいのもいたらしい。俺を見て何やらよくわからないことを言ってくる。その言葉の中に お縄に付け という言葉が入っていたのは気のせいだと思いたい
「さぁ!今日こそ牢屋にぶち込んでやるのであーる!」
気のせいじゃないらしい。
「ちょっと待て、人違いだ」
「むむっ、言い訳をするか貴様!」
言葉を聞いてくれない、イジメかクソ野郎。
「? ちょっと待つのだアデコール。こいつ目が赤いぞ?」
耳を疑う。俺は黒だったはずだが、充血するようなこともしていない。焦る俺を放置して二人はボソボソと話して俺の方をまたむく
「人違いであーる。申し訳ないのであーる」
あーるっていう語尾ムカつくんだけどなんなんだろうか。二人はそのままどこかへ行ってしまった
「助かったのかね…?」
そういえばあいつらユーリ・ローウェルとか言ってなかったか。…確か俺の兄さんになるはずだった…?だとしたら狙われる程ヤバイのか?人違いじゃねぇよな…。
「取りあえず…歩くか」
見知らぬ町を歩く。勿論俺に視線は集まる。服装の所為か。新しい服を買わなきゃいけないのはわかるが金がないし文字が読めないから仕事すらできない。この世界のことは何も知らない。思わず溜息を付きたくなった
「おいアンタ、この辺じゃ見ない顔だがどこから来た?」


今日はよく話しかけられるなぁ



▽ △
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -