勝てば官軍負ければ賊軍 | ナノ
清水悠希 16歳、性別は女。見た目はほぼ男
好きなものは絵を描くこと、至って普通で平凡などこにでもいる女子高生だ。容姿や性格とかは置いといてだな
まぁ男子に告白されたことはあまりないけど女子からならいくらでもある。悲しくなんてない、絶対にだ。
今は放課後。学校の教室でボーっと赤い空を見ていた。描きてぇなぁなんて思っても道具を用意するには美術室まで行かなければならなかった。自分がいる教室は一階で美術室は四階。めんどくさくて足も動かない。
窓が開いていたのだろう、風がさぁっと吹いた、生暖かい風が頬を撫ぜる様にすり抜ける
「はぁ」
声が溢れた。今日はもう帰ってしまおうか、珍しくバイトもないし部活はやることだって特にない。机の上に乗せていた腰をあげバッグを方手に持ち教室を出た。
学校から駅へ、駅から家へ。30分程で着くくらい家は近かった、鍵をスカートのポケットから取り出して鍵穴に差し込む。しかし鍵を回してもあるべき感覚はない。あぁ、またか、小さな溜息を零してドアを開ける。
「ただいまー」
声をかけると二階からバタバタと足音が聞こえる
『おかえり!』
妹と弟が声を揃える、目をキラキラさせていた。そういえば帰ったら遊んでやると約束した気がする。今日はゆっくりしようと思っていたが、仕方ない。
「お前等帰ってきたら鍵閉めろって言っただろ?ドロボーが入ってきたらどうすんだよ」
しゃがんで二人の頭に手を置いて咎めるように言うが二人はなんとも思ってないらしく、それより早く遊ぼうと言った。
「ちょっと待ってろよ。服着替えるから」
そう言って自室へ戻り制服をハンガーにかけて普段着(ジャージ)を着る。梅雨があけたばかりなので長い袖を肘の前まで捲る。バッグをベッドの上に放り投げてドアの前で待つ二人の元へ行く。
「何して遊ぶか」
そう言うと二人は別々に喋る。野球、ドッジボール、勿論意見が違うので争いになる。そんな二人を抑えて野球の次にドッジボール、ということになった。
弟は俺にバットを持たせ離れたところでボールを持って投げるフォームを作る。いくよ!と声をかけられ俺もバットを構えて投げられたボールを打つ。力加減が出来なかったのだろう。ボールははるか遠くへと飛んでいった。二人にここで待ってろと告げボールが飛んでいった方向へ走る。どこまで遠くに行ったかはわからないが木が多く生えている場所に来た。公園の傍にある小さな森らしい。草や枝をかき分けてボールを探す。バットを持ってきていたのでとても探しにくい。
「見つけた」
その声は俺が発したものではない。後ろを振り返ると白い服を来た男が立っていた
「やっと見つけたよユウキ・ローウェル」
男は俺の名前を呼ぶ、しかし名前の後に付けられたローウェルという言葉は耳に馴染まない。こいつは何を言ってるんだ、不審者を見るような目で見ると男は身を後ろへ揺らし降参したときのように手をあげおどける。
「ごめんごめん、今は清水悠希だったね」
今度はフルネームを言う。怪しいのには変わりがないので持っていたバットを構える。
「ちょっとちょっと、そんな物騒なもんしまってよ。怪しいもんじゃないからさ」
「怪しいやつが自分から怪しいやつですって言うか?」
言い返すと男は笑う。
「あはは、確かにそうだね。」
結局こいつは何しに来たのだろうか、早くボールを見つけて帰りたい。俺は男を放置してボール探しを再開しようとすると男は慌てて俺を呼び止める。
「待ってよ!話があってきたんだよ…もう本当君はお兄さんにそっくりだね」
最後の言葉に引っかかる。お兄さん?俺に兄さんはいない、弟と妹しかいないはずだ。
「俺に兄さんはいねぇよ阿呆。嘘つくならもっとマシな嘘つくんだな」
「いや、いるよ。君のお兄さんになるはずだった人なら」
こいつはキチガイなのだろうか。意味のわからないことをベラベラと喋る。
「まぁ話を聞いてよー」
「…さっさとしろよ」
男は笑顔になった
「本当?ありがとー!んじゃあ本題に入るんだけど




 君はこの世界の人間じゃないんだ」


俺はとんでもないキチガイに絡まれたらしい


▽ △
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -