勝てば官軍負ければ賊軍 | ナノ
この世界にはギルド、という団体的なものがあるらしい。
誰でもギルドを作ることができる。書類提出とかいらないらしい、つまり名乗るだけでそのギルドは成立する…らしい。いい加減な気もするけどそれで成り立つんだからすごい。いつかつくってみたいな。
帝国とは仲がよろしくないようだけども。
まぁ今はそんな余裕ないから生きるのに必死だけど。落ち着いたらちょっとやってみよう。団体は苦手だから一人で、ってことになるかもしれないけど。
「そういえば」
最近絵を描いていない。折角持ってくることを許されたのだから一回は描きたい。というかこのめずらしい町並みを描かないことには気が収まらない。
ここだけじゃなくてこの世界には珍しいものが沢山ある。記録するように絵を描きたい、白黒でもいいから。
思い立ったが吉日、やるしかない。 
何日か放置していた道具がバッグに入ってることを確認してどこにしようか考える。
アクエブラスティアと呼ばれるあの噴水みたいなものにしよう。
すぐに俺は家から出た。

「ほぉう…ここら辺でいいか。」
適当に塀的なところに座る。バッグから紙と鉛筆を出してアタリを描く。描いたことがないから少し苦戦する。
アタリを描き終わって下書きを書き込む。アタリの線を大体消してから絵の具と水と筆を出す。水色と白を混ぜて薄い色を作る。水の部分と空の部分を塗ってから絵の具に白を足して布につける。その布を空に押し付けて雲に見立てる。青をたしたり緑をたしたり紫をたしたりして、色をつけていく。
そうやって全体の色が塗り終わった。俺はいつも絵を描いたとき裏に描いた日付を書くのだけど、今日は何月何日何曜日なのだろうか。というかそういう概念があるのだろうか。
「それは君が描いたのか?」
顔をあげると騎士がいた。少し驚いてて声が出なくて首を縦にふる。騎士は絵をまじまじと見つめて考え込んでしまった。なんだろうか、著作権とかで逮捕?それはないと信じたい。
それにしても、なんで騎士がこんなところにいるんだろう。騎士は下町が嫌いなんじゃないのか?
「綺麗な絵だ。君がよかったら私に売ってくれないか?」
こんな汚い絵に値打ちがあるのか…!呆然と騎士の顔を見つめる。赤い目が俺を見ている、なんか目と目があうーって流れそうだ。黙っておこう。
「あ、あのえっと」
「…あぁ、いきなりすまない。驚かせてしまったか。」
眉を下げる赤目の騎士。赤目って俺と同じじゃん、なんかテンションあがるわ。
「大丈夫、です。えーと、こんな絵を買っても…」
そこまで言って言葉が萎んだ。だってなんかこの人威圧感すげーんだもん。
赤目の騎士は俺の言わんとしたことが理解できたのか数秒あけて微笑んだ。あ、かっこいい
「その絵はとても綺麗だ、そんなに卑下にすることではないだろう。」
頭に手が置かれた。お、お父さん!とか叫びたくなるなこれ。
なんだか気恥ずかしい。前の世界では絵を褒められたことがない、描いた絵を誰にも見せてないからなのだが。
「そうだな…5000ガルドでどうだろうか」
いやいやいやいや高すぎだろう。こんな落書き100ガルドにすらならないだろう、この世界の価値観はわからないけど。
「そこまで高くなくても…むしろお金出させるのが失礼なくらいですよ?」
「そんなことはないだろう。」
「じゃあ、その、どうぞ?」
引き下がりすぎるのも礼を失すると誰かが言ってた気がしたから取り合えず売ることにした。自分用のは今度描き直そう。
お金が入った袋を受け取って絵を渡す。手にかかる重さがなんとも言えない感覚をおこす。嬉しいような申し訳ないような達成感があるような…うんわからん。
絵を受け取ったあと赤目の騎士はまじまじと絵を見つめる。なんか恥ずかしいから視線を下に向ける。ユーリと色違いのブーツが目に映る。…にしても変なデザインだな。
「君は画家なのか?」
赤目の騎士は絵から目を離さずに俺に言った
「いや…趣味で描いてるだけ、です」
詰まりながら言うと尚も目をそらさずにふむ、と声をもらした
「その割には綺麗な絵を描くのだな」
早くどっか行ってくれないかな。ベタ褒めしてくれるのはありがたいけど恥ずかしいし、下町の人にわずかながらチラチラと見られている。
き、嫌われたらどうしよう。
だんだんこの赤目の騎士と近くにいることが辛くなってきた。心拍数が上がる、冷や汗が出る、恐ろしさが湧き上がってくるい。ヤバイな
「気に入った、また機会があったら売ってくれないか。」
「はい、いいですよ」
一刻も早く離れてしまいたかった俺はついOKしてしまった。後にこれじゃあまた会う約束したようなもんじゃないか。やってしまった、と思ったときには赤目の騎士は「休憩の邪魔をしてすまなかった。また会おう」と言ってどっか行ってしまってた。その場はしのげたけどこれぜってーまた会わなきゃいけないじゃん。


なんだかうなだれたくなった




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