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※少女漫画BASARAの揚羽
※男主、名前は要
※終盤だけ


「揚羽っ!」

揚羽の眼前で綿朱子が要の両腕に引かれてばさりと広がる。要が今にも射抜かれそうだった揚羽を庇ったのだ。近い距離から放たれた矢は、要の肩に深く刺さった。

「要、おまえは阿呆か!どこで、ここを……」

咎める揚羽に蜻蛉がぴぃと鳴いた。要は蜻蛉の後をついてきたのだろう。二人の背後で門が崩れた。夜郎組の数人が巻き込まれた。残るのは蜂也と密のみ。

「出口はなくなったぜ、・・」
「そんなもん、最初からいらねえよ」

要は笑って、邪魔にならないよう箆を折り取った。刺創に負担がかかり、小さな呻き声をあげる。
この狭い場所で二人で戦うのは厳しい。揚羽は要に石を押さえるように言い、蜂也に切りかかった。

「おい馬鹿、お前のほうが傷が……」

幾度か切り結んだ揚羽は、一瞬の隙をついて蜂也の腹を深く切る。

「その程度の腕で、このオレが斬れるか!」
「揚羽、座ってろよ!なに暴れてんだ馬鹿!」

要はぐいと揚羽の裾を引いて石の前に腰掛けさせ、揚羽を庇うように密の前に立った。

「帰蝶さん、要さん、あなた達の共演、好きだったんですけど」
「いつもみたいに阿呆面晒してみせろよ、密さんよ。オレがそこの蜂也みたいに転がしてやるから」
「私はね、蜂也さんを信じているんですよ」
「……それって最期の言葉ってやつ?」

密と要が刀を構える。どちらともなく動きだし一度二度と刃を重ねる。技では勝てないと要は悟った。互いの力が拮抗する。鍔ががちがちと触れ合う。信念に燃えた瞳が絡み合う。力が傾いた。要が跳ね飛ばされよろめく。刀を振り被り止めを刺そうとする密の腕が、斬り落とされる。揚羽だ。要が密の胸に刀を深く突き刺した。肩口まで切り上げると血飛沫が舞う。

「揚羽……」
「はっ、腑抜けてるなよ、要よ」
「揚羽の馬鹿、座ってろって言ったのに」
「こんな状況でちんたら待ってられるほど図太くはないね。お前も、密なんか相手にして、馬鹿か」

揚羽が倒れた要の腕を掴んで立たせようとするが、要は逆に揚羽を引っ張って転ばせた。

「おい、なにしやがる」
「揚羽こそ。死ぬつもりだったろ、馬鹿。殺してやるかよ、お前なんて」
「別に死ぬつもりはないさ、ただ、ここが風の吹き溜まりなら、それでよかった」
「もしかして、命を懸けられる女ってやつか?"賭けて"勝ったなら、戻ってくるさ」

要は座ったままの揚羽を置いて、崩れた門から手頃な大きさの瓦礫を拾い、滑りつづける石の下に挟み込んだ。石は瓦礫を少し削ったがそのうち止まった。時間稼ぎにはなるだろう。要は更にいくつも瓦礫を重ねると、揚羽に手を差し出した。

「ほら、馬鹿揚羽。行くぞ」
「……お前に手を引かれる時が来るとはな」

ぱしりと手が繋がれる。
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