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お題:夜の散歩
888字 30分

小さな火が灯った暖炉の前の長椅子に座り、シリウスは分厚い本を見ながら何事かを羊皮紙にメモしている。羽ペンを置いて一息ついたシリウスに、おれは声を掛けた。

「お疲れ様、シリウス」
「先輩、まだ起きてのか?」
「なんだっけ、あれ。ほら、天文学の研究してて、ドラゴンハンターのクィディッチ選手。確かMかNから始まる名前の……」

おれが説明を続けようとしたのを、シリウスがちょっと飽きれた顔をして遮った。

「そんなやついたか?それ何人か混ざってるだろ。それに、消灯時間はとっくに過ぎてるぜ」
「そうだっけ?その人の名前を調べようと思ったんだ、気になって眠れなくてね。シリウスは……勉強?珍しいね」

天文学者で、ドラゴンハンターで、クィディッチ選手。確かにいた気がする、何で聞いたんだろう。魔法史でかな。昨年おれが習ったのなら、シリウスはまだ習ってないだろう。

「課題じゃあないんだけど、変身術のことで……」

言い淀んだシリウスをよそに、書き散らされたメモを読み上げる。

「許可が必要?、習得は難しい、大きさは動物による……変身術、の、動物もどきとか?」
「ああ、そういえば、あんたは変身術は得意だったよな?」
「そうだね、魔法史よりは。禁書の棚にあれば動物もどきの本があればいいけど、これより知能の高い動物を変身させる呪文のほうが参考になるんじゃないかな」

シリウスが持っていた本は教科書に出てくる基礎的な内容を、より詳細に記したたものだった。それよりも、動物もどきにピンポイントで光を当てた本のほうがいいだろう。ただし、動物もどきとなるには登録と許可が必要で、学生のうちになることはまずない。

「ああ、ありがとう」
「じゃあいくぞー」

羊皮紙をくしゃくしゃに丸めた暖炉に放り込んだシリウスを、階段ではなく、扉へと促す。何を言っている、という目で見られたのでおれは答える。

「おれ、天文学者兼ドラゴンハンター兼クィディッチ選手について調べたい。シリウス、動物もどきについて調べたい。図書室行かない?」

シリウスはすっかり冷めて脇におかれていた紅茶を飲み干した。
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