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お題:少年の復讐
699字 30分

終わらない復讐

一本先の道路で男が自動車に跳ねられる。少しのあいだ宙に浮いた男の体は硬い地面に叩きつけられて、死んだ。即死だ。派手な桃色の髪の隙間から血が流れ出したのが見える。
少年は何度目かの舌打ちをした。早すぎる。この男が死ぬのに、また間に合わなかった。

足元がぐらりと揺れた。目が痛んで瞼を強く閉じると、足は確かに地面を踏みしめた。
目を開く。どこかの山道のようだ。胸騒ぎの強くなる方向へ走ると、少年はこちらに背を向けた一人の男を見つける。目の前の小屋に立ち入ろうとしているようだ。少年には、男が奇妙なダンスを踊りはじめたように見えた。手足が痙攣した後、そのまま仰向けにゆっくり倒れる。胸は血で染まっていた。どうやら狙撃されたようだ。男は死んだ。

ゆっくりと瞬く。

今度は男が黒い頭巾を被った人を殺そうとしている。とどめを刺そうとした瞬間、男の身体中に小さな穴が空く。何があったのか、少年には分からない。けれども男が死ぬことは理解できた。

目の痛みにはもう慣れた。視界が暗くなる。

視界を桃色が覆っていた。どん、と押されるようにして少年は後ろに倒れる。すぐ目の前に立っていた男が倒れたのを支えきれなかったのだ。ナイフを手にした物取りが走り去る。少年は男を自身の体の上からどかした。
まだ、終わらないのか?男は虚ろな目で呟く。少年も囁き返した。おれも、終わりにしてほしい。

目の痛みを無視して、少年は男の首に手を掛ける。男が最後の息を吐き出す前に少年の視界は暗転した。

にぶい音のあと、背後で叫び声があがった。かん高い声や潜められた囁きから察するに、飛び降りだろう。少年は振り向かなかった。

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