memo | ナノ




お題:愛すべき善
必須要素:ハッピーエンド
744字 30分

欲しいのはハッピーエンド

レオンはいつだって自身の正義のために戦ってきた。そういう星の下に生まれたんじゃないかとも思う。命を諦めたことはなかったし、なんど倒れたって立ち上がった。癒えない傷もたくさんあるけれど、それを後悔したりはしない。
ハッピーエンド。永遠に幸せに暮らしましたと言うあり触れた言葉。もしかしたら、そんなものは一生訪れないかも知れないなんて恐れに蓋をして、自身の意思が潰える可能性を見なかったことにして。ただそれだけを、たったそれだけを只管に望んでここまで走ってきた。

正念場だ。残弾数は数えなくたって分かってる。二つあったナイフの片方は折れて、もう片方だって血と脂でなまくらだ。彼だって俺と似たような装備、だからといって絶望にはまだ早い。研究所の爆発までの残り時間を知らせるアラームが鳴り響く。
虫を原型としたイレギュラーミュータントの舌を引きちぎり、長い長い廊下を駆ける。いまにも閉まりそうなシャッターをすり抜けて、解除コードを打ち込む彼の横で、研究所職員の成れの果ての首を叩き折る。非常用のランプの赤色が無性に俺を腹立たせた。
二つ目の扉が開く。どこかで爆発が起こった。残り時間はまだある。研究所の自爆ではなく、事故だろう。いきなり飛び出してきた犬型のB.O.W.が彼に飛びかかるが、強烈な蹴りでそいつを吹き飛ばした。踵で頭を潰す彼は、一言汚いと呟いた。今更だと二人で笑った。
最後の扉が見える。彼は口笛を吹いてナイフをくるりと回した。俺はやれやれと思いながら仕方なく銃を構える。扉の前には、調査団全員を食い殺したB.O.W.がいた。全く、泣けるぜ。


この正義に殉じる覚悟はとうの昔にできていた。けれどここで死ぬつもりはない。彼が欲しいと言った御伽噺の最後を、俺はまだ見ていない。
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