memo | ナノ




※名前はメアリー、孫
※ディエゴが祖父
※ディエゴの奥さんの名前がクレメンス

クレメンスの遺志に従い、広大な屋敷を福祉組織に売却し、一回り小さな、しかし一人住まいに充分な屋敷に移り住んだ。使用人も長年雇っていた数人を残し、他は全て解雇した。コッツウォルズのマナーハウスから霧深いロンドンに落ち着いた俺は、死別した妻に長年仕えた女中頭から驚くべき事実を伝えられる。

「オレの、孫?」
「はい。奥様のお嬢様には御息女がいらっしゃいます」

オレの配偶者の娘の娘。確かに孫だ。納得し、今は亡き妻の「私には孫がいる」という言葉を思い出した。

「で、その……孫、はどこにいるんだ?」
「イタリアにいらっしゃいます。三日後の昼頃にいらっしゃる予定です」

娘は若く死んで、イタリア人の男も二年前に死んだそうだ。クレメンスとは大分疎遠になっていたが、その死をきっかけにして孫と祖父が会う。一件単純なようだが、問題の孫は祖父との面識がなく、また血縁が無いという点でおかしな図になる。


「旦那様、メアリー様がいらっしゃいました!」年甲斐もなく慌てた女中の声にはっとしたように女中頭が顔を上げた。予定が前倒しになっているのかもしれません、失礼しますと言い微かな足音を立てて出て行く。膝の上に申し訳程度に広げた新聞を乱雑に畳んでまだ見ぬ孫に思いを馳せた瞬間、重厚そうな色と艶を持つドアがほんの少し開いて、すぐにぴょいと閉じる。また少し開きかけたのを大股にドアに近寄った俺はがっちりと掴んで大きく開いた。ドアの端を掴んでいたのか、まろぶように少女、いや幼女が飛び出して足にぶつかりそうになったのを支えて、聞いた。

「あー……はじめまして。君は?」
「はじめまして、おじいさま!メアリー、メアリー・ジョルダーノです!」

くりくりした目を好奇心やらなんやらで輝かせた少女。これはもしや、孫か。

「オレはディエゴ・ブランドー。君ってもしかして、オレの……」

孫か?と続けようとしたところに、女中が飛び込むように部屋に入ってきた。

「お嬢様!」

女中に駆け寄ってスカートの端にしがみつくメアリー。

「あ……失礼いたしました。メアリー様をお連れするようにいわれた者です。それではこれで」

呆気にとられたままのディエゴを置いたままに、メアリーはいやいやと駄々をこねる。また会えますからと諭しつつも、女中は無情にも俺を残して立ち去った。後に残されたのは初対面の幼女と、俺。

メアリーは少し不満げに唇を尖らせていたが、やがて俺の足に手を絡ませて、改めて「はじめまして、おじいさま」と言った。
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