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リリーはうつくしくて誰よりかしこい。

はっとすることが、時たまあった。例えば、仲の良い女の子たちと図書室で勉強をしていたとき。宿題をおざなりにしてお喋りだったり羊皮紙に落書きをしたりしていたときに、同意を求めようとリリーを振り返ると、リリーはほんの少し微笑んで、こちらを見ていた。その笑みがすっと大人びていて、グリーンの瞳がなんとなく愁いを帯びていたから、わたしは気まずく思って目を逸らしてしまった。
眠くなる授業のとき、湖のそばで読書するとき、ベッドに入る前の一瞬、リリーはそんな表情をする。そんなとき、わたしはどうしてもリリーを真っ直ぐに見ることができない。
その微笑みが古い子供向けの聖書の挿し絵のマリアさまに似ていると思ったのは、決して昔のことではない。

ある時、リリーのうつくしい微笑みから目を反らしたときに、スリザリンの少年と目があったことがある。眉根を寄せた表情は私とそっくりで、ああ、彼もそうなんだと知った。リリーの不思議な笑みを共有できることを少し嬉しく、またそれが私だけのものでなくなったことを残念に思った覚えがある。

私がその表情を一番最初に意識したのは多分、二年生か三年生の頃だったと思う。最後に見たのは、卒業の少し前だ。ホグワーツを卒業してからは、リリーとは一度も会わなかった。結婚して子供を産んだと人づてに聞いた。相手はきっとあのスリザリンの少年ではないのだろう、と思う。

いつかの誰かがほしがったもの

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