セイブミー | ナノ


新年早々吉良さんのお家に行くと、いつもとあんまり変わらなかった。小さな鏡餅がおいてあったくらい。

「吉良さん、あけましておめでとうございます!」
「彰子君か、あけましておめでとう」

吉良さんは少し驚いた顔をしていたけれど、お家にあげてくれて、筑前煮とお雑煮まで出してくれた。案の定というかなんというかどちらも美味しくて、良い加減吉良さんに弟子入りすべきかもしれない。申し訳ないので食器洗いはやらせて貰い、去年みたいにこたつに入ってみかんをめりめりと剥く。みかんの甘酸っぱい匂いが味の濃いお節をさっぱりさせてくれる。吉良さんはりんごみたいにくるくる剥いた。とことん器用だと思う、そのうち、飾り剥きでもするんじゃないだろうか。ちなみに私は多分一番ノーマルな、ヘタの反対から星型に剥いて行くのを採用している。薄皮は剥がない。

「吉良さん、初詣行きましょう、初詣!」
「……ああ、いいかもしれないね」

断られることを前提に誘ったのに、うっかり許可されてしまった。新年早々初詣デートってなんか初々しい高校生みたいだ。本当は一緒にカウントダウンして年を越して、初日の出を、見に行きたかったなんて言えないけど。


五円玉を放り投げてから引いたおみくじは、中吉だ。良くないのかしらないけど、多分普通。吉とか中吉とか、そのあたりが微妙でわからない。大吉中吉小吉だけだったら分かりやすくていいのだけど。
恋愛のところに新しい出会いとかなんとか書いてあったけれど、そんなものは無視だ。出会いはもう二度といらない。すぐに結わえ付ける。吉良さんはちょっと眺めてお財布にしまった。
お財布にしまってよいものかと思ったけれど、別にいいらしい。逆にいいことがあるとかなんとか。

「寒いです吉良さん」
「帰ったら餅でも焼こうか」

そのまま持って行かれそうなので、手を繋ぐのはやめにしよう。
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