Don't you cry no more. | ナノ


午前九時には少し早い時間、ベッドの上で。俺は自分の命がゆっくりと終わることを知った。

ダンテと同じ時を生きる事は、もとから無理だと知っていた。
俺は人造悪魔だった。ヒトとして生きるためのものをほとんど奪われ、悪魔としての力を中途半端に植え付けられた。歪んで捻れた身体と精神を騙し騙し生きていたけれど、これは、もう駄目だ。今からベアトルはゆっくりと死んでゆく。自分の体なのだ、勘違いなどではない。ここが限界、ここで終了。これより先は無い。後は朽ちるまで待つだけ。幸せがゆっくりと死んでゆく。
彼に知られてしまうのは、少し怖い。剣を振るい、悪魔を切り裂くこともできなくなるのだろう。いつまで自分の力で立てるだろうか。話せなくなるのはいつだろうか。理性をなくした姿を晒すのだろうか。後どれくらい、ダンテと共に生きることができるのだろうか。

階下からはベーコンの焼けるパチパチという音が聞こえ、コーヒーの香ばしい匂いが漂う。ダンテが朝食の支度をしているのだろう。手伝おうと思ったけれど、今はどうしてもできない。体が重い。神経が滞る。あともう少し、少しだけ。
足を引き寄せて体を丸めて、そのままそっと重い瞼をおろした。
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