「ファナスティック!」の暁月夜様(愛する月夜たん)に相互リンク記念として捧げます! ◎四木正・四木さんに臨也の情報を運んでる系男子の正臣。 とある事務所の一室。 明らかに堅気ではないと分かる男達に構わず、無造作に黒い革張りのソファーに寝転がる少年――紀田正臣はポケットナイフを頭上に掲げ、陽の光に遊ばれる鋼色に微笑んだ。 顔面に傷跡を残した男達が正臣を諭すように睨み付けるが、その表情は出入り口の扉が開いたことにより緊張の色へと変化する。 「四木さん」 「もう来てたのか。悪かったな待たせて」 扉を開いて現れた男は周囲の青年達に「行って良いぞ」と目線で合図する。 正臣は寝転がった体勢のまま、男、四木を迎えるように腕を広げた。 物怖じしない少年の様子に苦笑しながら四木は煙草を一本咥えると、正臣の隣にどかりと座り込む。 「四木さん遅いです。俺、ずっと待ってたんですよ」 「仕事が長引いたんだ。悪い。ところでそのナイフは?なんだ、どこかの情報屋から貰った護身用ナイフか?」 「臨也さんが四木さんに襲われそうになったら刺せ、って貸してくれたんです。格好いいでしょう?」 「……良い趣味してるな」 口元を歪ませ、紫煙を吐き出す彼の肩に擦り寄りながら、ポケットからはみ出た煙草の一本を取り出し、真似するように自分の口元に寄せた。 そのまま四木の煙草の先端に自らの先を押し付ければ、ジジ、と枯れた音と共に赤い炎が点る。 「ガキの頃から煙草なんて吸ってるとロクなことにならねえぞ。いや、こんな所に居る時点で既にロクなもんじゃねえが」 「今時のガキはちょっとませてるんです。だからちょっと危ないことの方が好きなんですよ」 「へえ。で?折原臨也の動向は」 「特に変化無しです。俺があんたに襲われることを危惧してるだ、け」 最後の「だけ」を強調し、挑発するようにナイフの背を四木の太股になぞらせる。 四木はそれを一瞥しただけで何の変化も見せない。つまらなそうに眉を顰れば、黒い視線。 「あんまり調子に乗った面かましてるとどうなるか分からねえぞ」 「……ごめんなさい」 「敬語」 「……、すいませんでした」 強い語調で迫られ思わず怯めば、笑み。 「そうやってしおらしくしてりゃいいんだよ。ナイフも仕舞っとけ」 「それは駄目です」 「、」 「襲われるのは、嫌」 意味有りげに含み笑いをして見せれば、咥えていた煙草をするりと奪われる。 正臣は口内から抜けた苦味を追うように、四木の唇へと吸い付く。 捻じ込まれた舌の生温さに応えようとすれば、その前に離れてしまった。 「……けちだなあ、四木さんは」 「今回の報告が『特に変化無し』で済むと思うなよ。もっと詳しい情報持ってくるか、身体張ってあいつの喉元噛み千切って来い」 「そうですね、俺が臨也さんを殺したら幾らくれます?安い金で雇われた、切り捨て御免の情報運びの鉄砲玉は俺も嫌です」 「お前じゃあいつは殺せねえよ」 物騒な提案を表情一つ変えず却下する彼の横顔を眺めながら、片手でポケットナイフを弄ぶ。 片手に収まる程度のごく小さいそれを色々な角度で観察しつつ、自分のもう一人の雇い主である折原臨也の心臓を抉る想像をする。 豆腐のように存外柔らかい肉。驚愕に満ち溢れた表情。捻りを加えた一突きは、彼の内臓まで到達するだろう。 そこまで考え――正臣は苦笑と共に長い溜息を吐き出した。 「俺が殺される想像しか出来ません。言う通り、俺には無理です」 「いや、あいつもお前を殺せねえよ。殺す気なんざ沸かねえだろう」 「嘘。あの人なんか、簡単に俺を見放しますよ。最後、臨也さんは綺麗に綺麗に微笑みながら、『本当に君は可愛いね』って俺を殺すんです、きっと」 一見、自惚れとも感じられる言葉が決して優越感から来るものではないことを四木は知っていた。 臨也が無機質な笑みを貼り付けながら、少年の首を絞める姿を想像する。 腹底から湧き上がるどす黒い何か。 一回りも二回りも差がある目の前の少年に依存しているという事実は、どう足掻いても消せはしない。 「正臣」 「はい、何でしょう」 「お前、金なんて飽きる物じゃなくてもっと別の物欲しくないか?」 「何を?」 「愛とか、」 「恋とか?」 見透かしていたかのように続けた正臣は硬直する四木へ、極上の笑みを贈る。 誤魔化すように煙草の煙を吐き出す四木に小さく微笑む。正臣は出立前に持たされた臨也特製のナイフを空中ではらはらと揺らし、目を伏せながら言う。 「愛とか恋とかそんな綺麗なもの要らないから、四木さんが欲しい」 「俺は薄汚れたものだってか」 四木の軽口に頬を緩ませたまま、正臣は独り言のように、しかし確実な切望をちらつかせながら続ける。 「臨也さんと四木さんで俺を取り合ったら、誰が最初に死にますかね?臨也さんかな、四木さんかな、それとも俺が殺されるんだろうか。その先が見たいんです。臨也さんの驚いた顔とか、四木さんの苦痛に溢れた顔とか。その為なら平穏なんて、要らない」 だから臨也さんと貴方の間をうろついてるんでしょう、と続ける正臣。 恍惚とも呼べる表情で『日常を捨てる』と。間接的にそう言い切った眼前の少年に、四木は深く溜息を吐いた。 授かった小さなナイフを、まるで宝物のように抱き包む正臣。 その笑顔が臨也の笑顔に似つつあるという事実に湧き起こった嫌悪と憎悪をなんとか制御し、四木はそれら全てを意味の無い笑みへと注ぎ込む。 ――やはりロクなことにならない。 心中に洩れた本音をうっかり声にしてしまわないように、堅く口を塞ぎながら時計を確認する。正臣も釣られて自らの腕時計を眺めた。 午後5時49分。 正臣が臨也にタイムリミットと示された5時50分を迎えそうになっていた。 Black jack 利己的ゲーム? ―――――― 相互記念です!ごめんねこれ途中から自分でも何書いてるのか分からなくn 取りあえず四木正増えろ。 ◎月夜ちゃんとはツイッターで知り合って仲良くさせてもらってます!大好きです!!!とても!!!(迫真) 拙い文章ですが受け取ってくださると嬉しいです´`* 書き直し・返品いつでもどうぞ! |