降臨祭、固執遊泳のおまけ臨正R18*です。
エロがたりなくてたりなくてもうぐっちゃぐちゃの末路だよ!(*´Θ`*)




ぎしり、と。
唸るようにベッドが軋む。


「ん、ぁっ、は、あ……ふ、ッ!」

柔和な笑みとは似ても似つかないような光を称えるその瞳に、優しさだとか、温もりなんてある筈もなく。
胸奥から競り上がってくる快感を押し込む術など知らないから、ただその瞳から逃れるように瞼を閉じる。

それだけで、疲労感も、羞恥も、全ての感情が軽量化される。

「ま、さおみく……っ」
「はぁ、や、……あ、あ、やだ、や、」
「なんで、おれのこと、みないの、」
「、」

律動に合わせて紡がれる問い。
聞こえない振りをして、もう一度シーツを後ろ手に握り返せば、ふわりとシャンプーの香りが鼻腔を掠めた。

「んっ、……あ、あ、ああっあああ、ッ!」

その瞬間、腰を力任せに引かれ、臨也さんのそれが最奥を貫く。
息絶える魚のように、ぱくりぱくりと言葉にならない悲鳴をあげれば、不機嫌そうな臨也さんがまた舌を絡めてくる。

こんなことになるなら誕生日なんて祝わなければ良かった。

半歩遅れて白濁の液が飛び散り、脳髄が白む。
形の良い顔が僅かに顰められたと思えば、熱く、逃れようの無いそれを目一杯体内に注ぎこまれた。

「……なかにだすなって、言ったのに」
「気持ちよかったよ」
「ふざけんな抜け触るな」

謝罪のつもりか、ちゅるりと既に赤く熟れた小さな突起を吸われる。
達した後の身体は反射的に反応してしまい、ピクリと揺れた腰に臨也さんが苦笑した。

「正臣くんのなか、あっつい」
「……さわんな、黙って早く抜け、」
「ね、今日ローション使ってないの知ってた?若いっていいね。ほら、まだこんなに元気じゃん」
「や、め、っ」

耳朶を甘噛みされ、既に萎えたそこをもう一度擦り上げられる。
新しい快感に堪えようと、必死に口元を手で覆った。

その行動が臨也さんの機嫌を損ねたのか、先端を力強くぐりぐりと刺激されただけで、熱い自身が引き抜かれる。
定番の「飽きたからやめる」だ。

「俺のこと見てないでしょう?」
「見てますよちゃんと」
「うそつきだなあ。なんか冷めた。さっさと抜けば?」

あんたが勃たせたんだろう、と心中で毒づく。
それでももう一度熱を発するそこは収まる気配など無く、シーツを片手にトイレへ向かう。

と。


「どこいくの」

臨也さんのズボンのジッパーが、かちゃり、と無機質な音を立てた。

「……トイレ」
「別にここで抜けばいいじゃん」
「悪趣味ですね。見たいんですか、俺の自慰」
「見たい」
「しね」

ため息を漏らすにも勿体無いその横暴さに、寧ろ苦笑さえ浮かぶ。
構わずトイレへ直行しようとすれば、重み。
引っ張られた腕はそのままに、もう一度臨也さんの腕の中へと引きずりこまれる。

「ここで抜いてよ」
「は、」
「ね?」

後ろから抱き込まれる形で、もう一度溜まったそこをシーツ越しに弄られる。
それも酷くがさつで、乱雑に。

「ふ、っひゃ、」
「随分かわいい声出すよね。ほら、手だけじゃ足りない?俺が舐めてあげようか」
「あ、飽きたって、いっ、たくせに」
「なんかムラムラしてきた」

尿道を親指でこねられ、首筋を舌でなぞられる。
射精したからか、疲労感は存外大きく、それでも反応する身体が怨めしい。
一際強く、敏感なところを刺激されたと思えば、耳朶に痛みが走り抜けた。

「っい、た……」
「正臣くん、ピアスありがとうね。あれは沙樹ちゃんの提案かな?それとも正臣くん?」
「いざ、やさん、痛い」
「そういえば思い出したんだけど、確か去年の君の誕生日、俺が君にペアリングをプレゼントしたら丁重に断られたよね。それで今年はお揃いって君は俺を怒らせたいの?」

恐る恐る振り向けば、穏やかな口調からは想像も出来ない、赤く怒気の篭った瞳がそこにあった。

「それは」
「それは?」
「臨也さんが、滅茶苦茶な嘘吐いて、散々なこと言ったから」
「なんで?同棲してくれ、なんてどこぞの純情カップルでも年さえ越えれば言う台詞だよ?しかも俺は大真面目でちゃんと場まで設けた。ね、どっちがわるいんだろうね」

臨也さんは俺の自身を弄んでいた手を、止めた。


懐かしい、去年の俺の誕生日のことだ。
臨也さんはあの日珍しく自分で夕食を手作りし、俺に同棲を持ちかけてきた。
けれども精神的に廃れていたあの時の俺は、無下にもそれを一笑に伏したのだ。
「そう」と笑顔で返されたのでさほど気にしてはいなかったが、それが今ここで現れるとは。

臨也さんは快感に疼いて揺れる俺の腰を細い目で見ながら、もう一度耳朶を噛んだ。
今度はピアスの肉ごと噛み千切られるのではないかというほどに、強く、怨念深く。

「い……っつ、!」
「ねえ、噛み切っちゃおうか。俺の言うこと聞けない耳なんて要らないもんね」
「やだ、いざやさ、やだっ……」
「なんで?だって正臣くんは俺のものでしょ?昔、覚えの悪い君を散々躾けたもの。その時、ベッドの中で何回も言ったよね?君はおれの、」
「やめ、ろって!!」

思わず声を荒げる。
快感からか疲労からか、どうにも呼吸は定まらない。
臨也さんは俺の耳朶を舐め上げるのを止め、一人ベッドの中央へと移動した。

「いざや、さん?」
「教えただろ?玩具は飼い主が使うからこそ意味がある」
「あ、」
「ねえ。じゃあその飼い主が不機嫌になったら、玩具はどうすればいいんだっけ」

笑み。
あの時と、同棲を持ちかけられ、断った時と一寸も違わぬ笑みだった。
ただ笑みとして存在するそれは、絶対的な畏怖の証だ。

もう一度、紡がれる。

「ねえ、どうすればいいんだっけ?」

そっと近付き、艶やかな黒髪に口付けを送る。
改めて「誕生日なんか祝うんじゃなかった」と後悔の念が押し寄せるが、そんな感情さえもその笑みは握り潰した。

「いざやさん、」
「何?」
「なんでもしますから、酷くしていいから、臨也さん以外見えないようにしてください」

零れた言葉に帰還する、先程とは異なる悪どい笑み。

「いいの?正臣くんには沙樹ちゃんがいるんじゃないのかな?」

全て理解した上で、その上で更に押し殺そうとする。
どこまでも貪欲で、自己中心的で、恐ろしい。

その赤い瞳が無性に嫌になって、彼の目を手で覆い隠した。
拍子に臨也さんのポケットから転がり落ちた、数時間前にプレゼントした4人お揃いのピアス。

「さあ」
「、」
「今は臨也さんのことしか、見えてないので」

満足そうに、どこまでも満足そうに。
優越と束縛感から彼の口元が弧を描く。


「じゃあ、もう一度始めようか」


プレゼントを渡した時、涙した人間と同一人物だとは到底思えない。

まあ、なんだ、もう一度言う。
こんな奴の誕生日、祝わなければよかった。





泳/2
やっぱり、君のピアスと俺のピアス、交換しようか






おまけおわり。






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