【フリリク】有馬様へ
江戸設定で切甘気味。(フィクション内容あり)
正臣との会話で臨也視点文。臨也だけの会話文。



ある雨の日、男はただ想う。
微かに鼻腔をかすめるキンモクセイの香りを感じながら、男はただ想う。


―――――嗚呼、酷く滑稽だ。

この頃の花は香りが強くて堪らないねえ、そうは思わないかい?
そうかいそりゃあ悪かったね、どうやら俺と君の感じ方は違うらしい。あ、これ変な意味じゃあないから嫌いにならないでね。って、いった、痛い、そう余り怒るなよ、可愛い顔が歪んじゃあ流石の俺もいい気はしないもんだよ。はは、どうした。顔が紅色に色付く様も何というか、いや、痛いって。

冗談もさて置き…なんだい、さっき謝ったろうに。まだ不服かい?もう一度は無しだと先に言ったろう。もう…ほら、おいで。裾が乱れているよ、はしたない。
…こら、笑うな。
仕事はいいのかい?その様を見る限りじゃあそうとは言えないようだけど。
図星か。まあ、俺が個人的な感情でぶつくさと君に文句綴りを吐くわけにもいかないしねえ。いいんじゃないの、中々の難問続きではあるけどもそれは君の問題だからなあ…ふむ、困ったものだ本当に。

そんな崩れそうな瞳で見つめるなよ、俺を困らせたいのかい?
嗚呼、もう。ほら、拭いなさい。擦るな、おい、赤くなるだろう。まったく、ただでさえ雨のせいで気が重いというのにこれ以上面倒事を……分かった、苛め過ぎたよ。悪かった。どちらかといえば雨は好きな方だし…もう泣くな。

…話を変えようか。
あ、そうえいば昨夜街で甘味物を買ってきたんだけど食べるか…、って、ちょっと、目を輝かせないでよ。俺より甘味の方がいいのか。はあ…、即答は流石に傷つくよ、もう。少し待ってなさい。

ほら、抹茶は好きだったよね?わざわざ君の分まで買ってきてあげたんだからちゃんと味わいなよ。なんだ。せっかく持ってきてあげたのにもう興が冷めたか…あんなに目を輝かせていたのに。
はは、拗ねるな、冗談だよ。早く食べよう。

何だよ、そんな可愛い顔で睨まれても怖くないなあ。だから何が不服なんだい?君にはちゃんと口がついているんだから自分で言いなさい。
…何で街に行ったのか、って…、そりゃあ俺だって街くらいには出るさ。俺を何だと思ってるの?物の怪の類か何かだと思っちゃいないだろうねえ。ん?んーと、甘味を食べて、色々店を回ったねえ。キンモクセイの花を見て…三人女を口説いたな。稀に見るいい女だった。いや、抱いちゃいないよ。何故か寸での所で君が頭に浮かんだんだ。あれは参った。

……どうしたの。
こら…、はだけてる。はは、誘ってるの?
…本気かい?

いや、そんなことは…寧ろ歓迎というか、いや、そうじゃない。君はあの店を抜け出して来てるんだろう?俺は君を商品の一種として値踏みした覚えは無いし、きっとこれからも無い。君も俺を客の一人として見たことは無いだろう?
うん、うん…、そうじゃなくてさ。参ったな。

じゃあまず現実的に考えよう。君はあの店の一人だ。そして俺は本来君から見れば客の一人だ。店の規約にもあったんじゃないか?商売以外に身体を売るな、って受入れ人を断ってまであの場所に居続けた君なら痛いほど分かってるだろう。
感情的に考えれば…、それは…嗚呼、もう。落ち着け、どうしたんだ今日は。ちゃんと君は理解してると思ってたんだけど…俺の買い被りかな、まったく。

俺も君も、キンモクセイの甘風にやられたのか何なのか…。雨が強くなってきたねえ、ほら、もう少し中に入らないと濡れてしまうよ。ただでさえ俺の家の縁側は上傘が狭いんだからさ。

ん?……こら、その問いは禁句だよ。雨は嫌いじゃないんだけど…、嗚呼、ほらだから濡れるよ。女か…そこまで好きでも無いな、ああ、口説いたのは気まぐれだから。
…君か。その問いは一番困るな。
嫌い、じゃあ、ない…けど…おい、煽るな。俺にだって限界はあるんだよ?いつもこんな風に客を落としてるのかい?儲かるだろうねえ、そりゃあ。

……悪かった。ごめん、流石に言い過ぎた。違うって、ごめん、行かないでよ。ごめん。
違う、苛ついたんだ少し。八つ当たった、悪かったよ。
ごめん……いや、だから、好き。怒らないで、ごめん。しょうがないだろ事実なんだから。怒鳴られるのは嫌いなんだ。
……座りなよ。
もう…恥ずかしい。今度は俺が頬を染める番か…こら、またそうやって誘う…、可愛いなあ。
ん?…別に何も言ってないよ、空耳だろう。

嗚呼、キンモクセイの香りが強いねえ。この香りは嫌いじゃないんだが…そうだ、黄色か。君に一番似合う色だ。確か花言葉は謙遜、真実の愛…笑ってしまうくらいに君に似合うね。良い花だよ。
…照れるなよ、俺にまで移るだろ。こら…、はは、それにしても雨がしとやかに降るものだ。いつもこういうものだったら助かるんだが…流石に盆を引っくり返したように降られちゃ敵わない。うん?は…まったく可愛いことを言ってくれる。

君は話を振り返るのが好きだねえ。自虐性癖があるなら先に言ってくれればいくらでも罵って…悪い、何でもない。
ふう…いや、少しあの菓子は甘すぎた。どうやら俺には過ぎるものらしい。

……不意打ちは…卑怯だろ。
ああ、甘みが倍になった。君と居ると俺が崩れていくよ。違う、嫌じゃな…、待って違うって!できればもっとして欲しいとか考えて、る…うわあ、俺今なら死んでもいいや。うん、うん…大好き。

ああ、滑稽だねえ。こんなに溺れる奴、他に居ないよ。俺のことだって。うん、いや…そうだね。まあ、そんなとこかな。
あ、もうそろそろ時間じゃないのかい?ほら、遠くで鐘が鳴ってるよ。さっさと帰らないとまたどやされるよ…また泣きそうな顔する。
じゃあしょうがないな。俺も感情を優先させたらどうなるのか試したかった所だ。

逃げちゃおうか、二人で。

ね、それでいいかもよ。意外と上手くいくかもね。
もう…何でまたそう泣くかな。ほら、あれ?どこにいったっけ…そう、それ。ほら、拭いて。擦るなよ。ほら…うん、まあなるようになるさ。だって鐘、鳴り終わっちゃったし。どっちにしろ簡単には帰れないだろ?なら良い機会だ。

はは…、そんなに酷い奴じゃないと思うけどな、俺。いいよ、しょうがない、俺が全部泥を被って…だから何で泣くの。うん、うん…こりゃ参ったな、どうせ泣くなら布団の中でに…悪い、睨まないでくれ。

はい、じゃあ決定。もう逃がさないよ。
うん、まあ。信頼してるから無いとは思うけど、逃げないように鎖でも付けておこうか。一応用意してるから。どう?縛られたい?いったい、痛い、叩くなよ。

嗚呼、やはりキンモクセイの香りが強いねえ。
そこの…そう、煙管取っておくれ。ううん、いつもは吸わないんだけどね。今日は特別。小さなお祝いだとでも考えといて。おい、笑うな、しょうがないだろ。今はこんなもんしかないから。
それとも…子供騙しかもしれないけどさ。煙管一つで契りを交わすくらいならこちらの方がいいだろう?今更何恥ずかしがってるんだよ、ほら、小指出して。

絶対に、俺から離れないで。
指切り拳万、嘘吐いたら針千本のーます。


「指切った」



【ある雨の日の花鎖】

(嗚呼、滑稽だ)
(キンモクセイの花が嗤ってる)



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有馬様リクエストありがとうございました。
頑張ったのですが私にはこの程度の世界観しか表現できず…!すみません!
やったことのない新鮮な表現方法だったので書いてる時とても楽しかったです^///^
ありがとうございました!





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