照明 役者が最も輝くのは本舞台のときだ。 湧く観客、軽快な動き、歯切れのいい台詞が乗れば相乗効果で更に舞台は震える。 「情けない演技しないでくださいね。俺の照明がもったいないから。」 紀田は含んだ笑みを浮かべつつ、折原の前に立ちふさがる。 豪語した紀田の額には、びっしょりと玉汗が息をついている。緊張からか足も震えていた。 初の大舞台なのだから、当たり前だ。思わず折原に笑みが浮かんだ。 「よろしく。」 誰かが部長、と自分を呼ぶ声がする。 構わずに紀田の髪をめちゃくちゃにかき乱してみれば、彼がおえーっと吐く真似をする。思わず笑い声をこぼす。 同じように笑っている紀田と目が合う。とにかく挑戦的な眼差しだった。 急かすように今度は折原、と呼ばれる。曖昧な返事を返したら、部員にしゃんとしなさいと叱咤された。 照明席で、紀田が照明の確認をしている。 20分もすれば、この舞台の真ん中で自分だけのために自分だけの光が注ぐのだと、そして劇が始まるのだと思うと、指先から甘い痺れが広がっていく。 ふと、紀田と目が合った気がして、わずかに目を細める。ちかりとスポットライトが光る。 観客の声がした。 ----- 演劇部キャストとスタッフ。 2014/01/06 16:33 |