牡丹灯籠*(臨正) R18注意*・元ネタ有り・自己解釈・捏造 ※小ネタにしては長いです。 もしかしたら加筆修正、後に短編に移動するかもしれません。 牡丹の色。形。 つ、と行燈の光に意識を溶け込ませる。 「あ、」 甘美な声は遠く近く寄ったり来たり、それにつられるようにして男は律動を激しくした。 快楽からか、涎の伝う唇により深く口付ければ、ぴくりと少年の身体は跳ね上がる。 少年から漂う牡丹の香りに魅せられた。 とある月夜の深い晩。 からん、ころんと駒下駄の音を響かせながら、従者を連れた少年が、紅色提灯をぶら下げて家屋に訪れた。 それは互いに恋焦がれ、恋焦がれ、その末路に自害した、あの愛しき少年の姿であった。 『何故お前がここに居るのだい』 歓喜と不安に打ち震えながらも、そう男が少年に問えば、笑み。 『何と野暮な物言いではございませんか』 貴方に会う為に、その為だけにこうして馳せ存じたのでございます。 そう、言おうとしたのだろう。だが、少年が言葉を発し切る前に堪らなくなり、唇を塞いだあの時。 全てが同じだった。当たり前である、同一人物なのだから。 白い肌。思慮深い瞳。幼いながらにも、端正な顔立ち。純真な心に、男で在りながら女物の牡丹の羽織を纏った少年に誰もが惹かれる。 自分も、同じ。 「ぁ、…い、た…い」 少年のしなやかな身体に、赤色の羽織が巻き付く。 熱く濡れた其処を突き上げれば、少年は顔を歪ませる。 「痛いのは、嫌だ?」 「良いですよ」 「何故?」 「無粋」 「、」 一笑に伏した少年に、男はむっとしながら纏まらない吐息を吐く。 「貴方だけの身体なのだから」 どこまでも妖艶に、ずるく。 くすり、と零れた笑みは、儚く溶けて消えた。 好きでは幼稚すぎる。愛してるでは物足りない。 焦がれて夜な夜な泣き濡らす毎日。 その日常の片鱗、男にある知らせが届く。「少年が自害した」と。 それから男はやつれ、念仏を唱える日々が続いた。 そんな中、求めて手放して、焦がれ伏した牡丹の香りが訪れる。 「ねえ、お前、」 「なに、」 「随分、綺麗になったね」 「き、れ……い」 時折漏れる少年の婀娜声に表情を緩めながら、しっとりと汗ばむ頬を撫でる。 今にも崩れそうな微笑みを浮かべる少年。 「殺したいくらい、私は」 「分かってる」 「貴方を愛して、愛して」 「来てしまったんだろう。此方に」 「いけない子でしょう。綺麗なんかじゃない、穢れた冷たい、」 「もう一度、否、何度でもお前に言おう」 綺麗だよ。 男はかしゃり、と軋む少年を―――既に白骨化した少年の頬を撫でる。 この世から消え去って尚、魂と肉体は滅びぬままに男との恋路を夢見た少年は。 何よりも冷たく、何よりも美しく。 視界の右半分ではあの牡丹色の少年。左半分では骸骨が笑う。 男はそっと現実を隠すように、左半分の瞼を押さえ、少年に口付けた。 「あなたも、随分毒されたものね」 ――――――――― あなたにならばなにをされてもいいけれど、 2012/05/18 19:37 |