独潜欲(臨正) ―――――俺、好きな人ができたんですよ。 ―――――そうなんだ。おめでとう。 ―――――俺、好きな人が居なくなったんですよ。 ―――――そうなんだ。おめでとう。 「居なくなったって言うか、」 俺が壊したんだけど。 「正臣くん、ショックで記憶喪失にならないかな」 そしたら俺が全部最初から教えてあげるのに。 俺だけのものに。 俺だけしか信じられないように。 共存と言う皮を被った、相容れないエゴ。 互いにそれをどこか心の奥底で理解しながら、合ってはならないと分かっていながら、それでもその先を求めた。 行為について回る背徳と虚無感。 その隙間を埋めようとまた互いを求め、そしてその行為によって余計に傷口が広がって行く。 始めた時から終わりは決まっていた。 始まった時から既にお互いが敗者だった。 「あーあ」 触れられたくない、感じて欲しくない。 傷口を舐め合う中途半端に汚れた関係を嫌い、より深みに嵌るとこを受け入れたあの少年に。誰にも触れて欲しくない。 ―――――でも、俺が君の事が好きなのは内緒。 ―――――相思相愛はまだおあずけだ。 ―――――君が俺無しじゃ生きていけないことを分からせなきゃ。 「だから、ヒミツね」 ------------------- どくせんよく。 潜む独占の欲。 2012/01/07 12:28 |