59cmの僕ら(帝正) 少し遅れてしまったが、親友はまだ居るのだろうか。靴も半履きのままに小走りで辺りを見回せば緩やかにゆれる黒髪が目に付いた。 正臣は校門に1人佇む少年に標的を定め、後ろからタックル並みに飛びついた。 「みっかーど!」 「うっわ、」 「なんだよごめんな遅くなっちまって!後でなんか奢るからさ、な?」 「もう…しょうがないな」 不服そうに頬を膨らませ軽く睨みつけられたが、同年代の割には童顔な帝人には恐怖も何も感じない。おまけにその後余りにも屈託の無い笑顔で微笑まれれば、つられるように正臣も頬を緩ませた。 杏里は用事があるらしいので先に帰ったらしい。正臣も帝人もその事を執拗に問いただしたりすることも無く、今日は珍しくたった2人きりでの帰路となった。 「あー、なんかあれだな。なんか改まると恥ずかしいな」 「そう?俺は正臣と帰れて嬉しいけど」 この友人は自分の発言内容の重さを認識しているのだろうか。知らず知らずのうちに紅潮していく頬にのせられ、ふわりと体温が上昇していくのがはっきりと分かる。 真横に歩いている帝人に知れたらと思うと、自分の意識とは無関係により頬が熱く溶けていくのが感じられた。 わざと踏み出す一歩遅らせてなるべく視線を合わせないように務めるが、それも虚しく帝人が見透かしたように笑みをこぼした。 「ねえ、正臣。顔赤いけど」 「へ!?いや、その、あー…はは、風邪だよ、今日も微熱が、」 「大丈夫?無理しないでね」 「はは…大丈夫だって」 流石に「お前のせいだよ」なんて感情を爆発させるわけにもいかず、苦笑いを貼り付けたままにもう一歩距離をとった。 数歩先を行く帝人の背中を見つめ、ほう、と一つ息を吐く。 まず杏里が居ないと言うシチュエーションからもう限界を感じていたのに、そんな笑みを見せられてどうすればいいんだ、と正臣は心中で悶え続ける。 2本目の電柱を通り過ぎた後、思い切って帝人の服の裾を握り締めればまたあのかろやかな笑顔だけが正臣の元へ帰還してきた。 「ねえ、正臣」 「、」 「手、繋ごっか」 ---------------------- 鬼畜帝人も…好きよ…… 2011/10/03 23:00 |