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相互リンク記念リクエスト
設定:
・微甘くらいのお話
・フランと夢主は同い年
・ベルは空気の如し(一応彼氏)

では、どうぞ。










膝を抱えて椅子の上に座り、今日の夕食でも考えているのだろう。

「フラン、ベル先輩が呼んでたよ」
「(面倒くさい)……ミーは仮眠中ですー」
「『そう伝えてくれ』って意味よね。じゃあ、その小声の部分もしっかりと伝えておくわ」

どこをどう見たって、暇潰しに窓の外を見ている、としか取れない格好だった。名前はカエルの帽子に握りこぶしを埋め込みたい気持ちを抑え、作り笑いでその場を去ろうとした。


書類を片手に耳には通信機を掛け、服のポケットはペンやマジックで埋め尽くされていた。名前は任務に出動しない場合はデスクワークへ移動し、報告書をまとめるのが第二の仕事だったが、それに比べて、ボスをはじめとする守護者等は常に自室で時間を持て余している。

やはり、人間の格差が現れているのだろう。たとえ、これから頑張ったとして守護者に抜擢する訳も無いので、そこは我慢しなければいけない所なのだ。
だが、フランを目にすると苛立ちが増してしまう。他の守護者(ボス以外)は任務に備え、それなりの事をしているのに、何故、同僚のフランは何もせずに怠けているのだろうか。

不満はただ募る一方だった。

「名前にそんな事言われると止めたくなっちゃいますー」

部屋を後にしようと廊下へ足を出した途端、入口から一番距離のある、あの椅子から一瞬にしてフランが名前の目の前に立ち塞がる。流石、霧の守護者とでも言うべきか。

「ちゃんと一語一句、間違えないように伝えるから大丈夫よ」
「別に堕王子の事は気にしてませんけどー」
「じゃあ、何?私、忙しいの」
「……その態度、益々止めたいですー」

ただフランが指をパチンッと鳴らし、その拍子に少しだけ目を瞑ってしまった、その一秒と満たない速さで、名前はフランのベッドの上に寝転がっていた。事に追いつかなかった、ドアの鍵が閉まる音、資料が地面に落ちる音が後々耳へと入ってくる。

「…………」
「戸惑ってますねー。一応説明しますけどー、名前はミーに押し倒されてるんですよー」
「…………」
脳では理解していた。
今自分がどういう状況にあるのか。けれど身体が思うように動いてくれない。身体を何かで縛られている訳ではなかった。
では何故か……。
名前にとって初めてだったからだ。この世界、この時代――男に抱かれたことが無い女性マフィアは滅多にいない――その珍しい人種が名前なのだ。

ただ顔を紅潮させ、目に涙を溜めるだけの彼女を眺めながら、流石のフランも躊躇する。

「名前ー?」
「…………か」
「名前ー??」
「馬鹿フランなんか死ね!!」

身体が動き始めた名前はフランの顔面に拳をめり込んでその場を立ち去った。散らばった書類を踏み歩き、落ちた通信機を残して。



やりすぎた



『――……ぉい、名前。バカエルはまだ来ねぇの?』
「……あぁ、ベル先輩。多分そのうち名前が走って来ると思いますよ」
『……何でカエルが出て来んだよ。ってかお前、何やった』
「はい、堕王子の女に"先に"手を出しましたー」





fin


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