誰も知らない君





「雲雀くん」

イタリア某所にあるボンゴレファミリーのアジト。
その地下深くにある日本家屋を思い出させるエリアは、ボスでさえもうかつに近づくことはできない。

そんな場所に、容易に出入りできるのはここを管理している雲雀と、もう一人…

「また不法侵入かい?」

「クフフ、マフィアのアジトに不法も合法もないと思いますよ?
最も、それ以前に、僕と君の愛の巣なんですから、僕がここにいるのは当然じゃないですか!」

「冗談じゃない。咬み殺すよ」

このようなやりとりも、その直後に投げられた雲雀のトンファーがアジトの壁に突き刺さるのも、アジトにいる全員が知っている。
そうして、日々ボスが溜息をついているのも…

そんなこととはつゆ知らず、骸めがけて投げられたトンファーは案の定壁に突き刺さり、それをよけた骸は楽しそうに笑うのだ。

「悪いけど、今日は君と遊んでやる時間はないんだ。明日から日本に帰るよ」

雲雀は刺さったトンファーを引き抜き、骸には見向きもせずにやりかけだった荷造りを再開する。

「ちょ、ちょっと待ってください!ジャッポーネへ出向く任務なんてなかったはずです!」

慌てる骸に対し、雲雀は表情をかえずに黙々と仕度を続ける。

「雲雀くん、聞いてますか!?だって明日は」

「うるさい」

仕度をする雲雀に近づいた骸はあっけなく部屋から叩き出され、その後雲雀の部屋の戸が開くことはなかった。





「聞いてくださいよボンゴレ…雲雀くんが実家に帰ってしまいました…」

「ああ、そう…」

その晩からボスである綱吉が溜息をつき続けるはめになったのは、もちろん骸が居座っているからだ。
有能な右腕も疲れ果て、あとは一晩中同じことを聞かされた。

「雲雀さんだって帰省くらいするだろ…?それより早く仕事してくれよ…」

「こんなときに仕事なんてしていられませんよ!そうだ、これは僕に与えられた任務なのですね!ようし、わかりました、待っていてください雲雀くん!」

綱吉の溜息をよそに、一人気合いを入れなおした骸は、目にもとまらぬ速さでアジトをあとにした。

「なんか、雲雀の奴が誕生日こそ任務を入れろって言った理由がわかった気がしますね…」

「うん…。かえって任務入れてあげればよかったよ…」

そんな会話がされているのも、骸以外のファミリーは皆予想がついているのだ。




所変わって端午の節句の日本、並盛で雲雀はいつになく平和な時を感じていた。
一人でゆったりとしたときを過ごすのはいつぶりだろうか。
イタリアでは任務に出ているときだけ、唯一一人でいられた。
アジトにいれば、昨晩のようなことが日常茶飯事になっていた。

「久しぶりの並盛は居心地がいいね」

ボンゴレ最強の守護者とも言われる雲雀がいつになく穏やかな表情でいるころ、ある飛行機が日本に向かって航空していた。

雲雀の前に大きな花束と大きなバースデイケーキを持った骸が現れるまで、あと、四時間。

四時間後に現れた骸にトンファーをお見舞いしつつも少し嬉しそうに雲雀が笑うのは、ファミリーの誰も知らないのだ。








fin

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雲雀さんお誕生日おめでとう!
10年後にはちょっとデレる雲雀さんがおがめるといいな←
久しぶりの文章で、なんだかごめんなさいな感じに仕上がりました!

葵都





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