聖夜は君に
微裏(かも)
12月24日。
世間は色めき立っているけれど、自分には関係も感心もない。
10年前ならば風紀の見回りに躍起になっていただろうが、今イタリアにいる身としては、その必要もない。
自室でいつも通りゆったりとした一人の時間を過ごす。
「こんな所にいましたか」
その一人の時間を邪魔するのは一人しかいない。
「クフフ、恋人たちのクリスマスイブだというのに、和服ですか?」
「うるさいね。僕は無宗教だ。クリスマスなんて関係ないよ」
本から視線すら上げずに言ってやれば、さも面白くなさそうに食い下がってきた。
「君の大好きなジャッポーネでは仏教徒でもクリスマスを楽しんでいます。ですから君も恋人たちのクリスマスを過ごしましょう!」
いつになく本気の骸は、髪をふわふわさせながら熱弁をふるう。
「うるさいね。僕は関係ない。他を当たりなよ」
「いいえ、僕は君じゃなければいけません」
骸の言葉の後、返す言葉が見つからなくて黙ってしまうと、なんとも言えない時間が二人の間を流れた。
たっぷりとその空気を味わった頃、骸のぞんざいなため息が静寂を破った。
「君がどう思おうと、今日はクリスマスなんです。しかし、君が嫌だと言うなら僕が引き下がりましょう」
先ほどのふざけた雰囲気から一変、骸の真剣な視線を感じる。
体が石なったように動かない。
再びしんとした空間が広がる。
苦には思わないが、決して快いものでもない。
「あまり無視されるのは好きではないのですが…」
半ば自棄な笑いを含んだ言い方で、近寄ってくる。
そうして耳元にくちびるを寄せて、いたずらに囁く。
「あまり無視し続けるなら、キス…しますよ?」
「いいよ」
この時初めて骸の顔を見やれば、驚いたような困ったような表情を浮かべていた。
「ふ…君、酷い顔だね」
「……君は、素敵な表情しすぎです…」
少し困ったような表情のままの骸に、ふわりと抱きしめられる。
胸の奥が甘く疼くのがわかった。
「ねぇ…」
徐々に力の込められる腕を感じながら、ゆったりと目を閉じる。
「はい…?」
「キス…するんじゃなかったの?」
骸の肩を押して体を離し見つめれば、互いの熱い視線が絡み合う。
そのままどちらかともなく唇を重ね、自然と横たわらせられる。
大人の、だけど大人しさなんてない深い深い口付けを繰り返す。
体の上にいる骸と脚を絡ませ合い、高まる体温を重ねるようにきつく抱きしめる。
何も考えない。
ただお互いに相手だけを感じてゆく。
熱が体中を渦めき、ようやく唇を離す。
高揚した骸の表情に、どくんと胸が鳴った。
「雲雀君…」
頬に添えられていた手は徐々に下がり、首筋から胸元を通って着物をはだけさせてゆく。
帯にたどり着いた手はゆっくりと帯を解き、体の側面を優しく撫でられる。
反対の手ははだけた裾から上に上にと上がってくる。
普段武器を握り、自分と激しく闘っているその手で、優しすぎるほど優しく触れられている。
「雲雀君…愛しています…」
体の熱の中心部寸前でうっとりと言われれば、返事の言葉の代わりに熱い息がこぼれた。
クリスマスなんて興味も感心もない。
ただ、君だけに…
fin
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クリスマスあんま関係なくなっちゃいましたが…
微裏もどきです(笑)
皆様にも…
Merry X'mas !
葵都 2012.12.25
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