ひらひら





ぐっと気温が下がったのはいつからだろうか。

気づけば朝晩のはく息は白く、周りの服装も暖かなものに変わっている。


「本当に寒くなりましたねぇ…」

隣に座る恋人は、縮こまって腕をさすっている。

「そうだね。明日は雪が降るらしいよ。」


以前ではこのように二人でゆったりと時を過ごす事など考えられなかった。
顔を合わせれば挨拶代わりに武器を交えていた。

気づけばボンゴレの10代目守護者になっていて、気づけば二人で時を過ごすようになっていた。


「君も、手が冷えているでしょう?」

そう言って手を握り自分のコートのポケットに入れようとする骸。
その手をひっぱたいてやれば、やれやれと肩をすくめる。

「ねえ、寒いんだけど」

「ですから、ほら」

嬉しそうに差し出された手を、もう一度ひっぱたいた。

「君、幻術でどうにかならないの」

「幻術では君しか暖かくならないじゃないですか」

「僕が暖かければいいよ」

そう言うと骸はむっと黙り込んでそっぽを向いてしまう。

そのふわふわと揺れる髪を見ていたら、名案が浮かんだ。

「ねぇ、暖かくなる事、シに行こうか」

自然と頬が上がるのを感じる。

「いいんですか?」

骸も楽しそうに笑う。
これは、決定だ。

「じゃあ、行こうか」

やけにご機嫌な骸は、鼻歌を歌いながらついてくる。
なんだか気持ち悪いけど、自分も気分がいいから目を瞑った。

「さあ、ヤろうか」

敷地内の開けた場所に出て、骸を振り返れば目をぱちくりさせている。

「外に出たら余計寒いじゃないですか…。まさか雲雀くんは野外プレイが好きだとは……!!」

意味のわからない事を言う骸に向かってトンファーを振る。
ギリギリでよけられるが構わない。
反対の手も振ると、骸はまた慌ててよける。

「さ、早くヤるよ」

「え、ちょっと待ってください!ヤるって、そっちですか!?」

この男は何を言っているのだろう。
ぶつぶつ言いながら三つ叉の槍を用意している。

「どうせ何を言っても聞かないのでしょうね…」

「当たり前だよ」


この会話が合図であるかのように、攻防が始まる。
ずっと追っていた相手だけあって、簡単には倒せない。

「恋人相手だというのに、相変わらず本気ですね」

「当然だね。手抜きしたら咬み殺すよ」


最初こそ会話をする余裕があったものの、しばらくすれば互いに真剣で、言葉も少なくなる。

最後の一撃とばかりに思い切り奮えば、武器と武器とが激しく音を立てぶつかり、間合いをとる。

「は…また一段と、強くなりましたね」

「……」

「おや…」

息を整える二人の間をひらひらと白いものが舞い落ちる。

それを見た骸は槍を下げてこちらへやってくる。

「やはり、美しいですね…」

骸は目を細めて目の前で立ち止まる。

「ああ、やはり君には雪の白が映えますね」

桜も映えますけど、と楽しそうに笑う骸に攻撃する気はもう起きなかった。

「……」

「どうしました?」


どうしたもこうしたもない。
あまりに愛おしそうな目で見てくるものだから、何と言ってやればいいかわからなくなってしまった。

「春になったら桜見物にも行きましょうね…」


そう言ってふわりと頭を撫でられたが、不思議と嫌な気はしなかった。


春になったら桜の花びら舞う中で同じようにされるのだとどこか確信してしまった。








ひらひらと舞い落ちる中で、君と二人。




fin


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なんだかんだでラブラブな二人を書きたかっただけなんです←
桜は骸雲にとっても私にとっても思い入れのある花です

葵都



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