private waitress





ある麗らかな陽気の日


「ねぇーえ、こんなに天気がいいんだから、外でお茶会でもしましょうよ、ね?というわけで、中庭に集合してちょうだい。ボスを待たせたらどうなるか知らないわよ〜?」


私を含む、幹部の各々が自室で武器の手入れなどしていると、よく知った男…もとい、オネエの声で放送が入った。

私は同じ剣士であるスクアーロの部屋でこの放送を耳にする。

「ね、お茶会だって!!」
「ちっ、誰の思いつきか知らねえが面倒くせぇぞぉ」
乗り気じゃないスクアーロを無視して私は目を輝かせて立ち上がる。

「じゃ、私先に行ってるね。スクアーロも、ボスに怒られる前に早くおいでよ?」


渋っているスクアーロを残して中庭へ向かえば、スクアーロ以外の幹部が揃っていた。
そして、驚き立ち尽くす私を追い抜いて特等席に座るボス。

「ボスまでこんな早く来るなんて、何事!?」

いつもは全員揃ってからしばらく経って来るボスが、今日はやけに早い。

「ねぇ、スクアーロは?」

「あ、まだ武器の手入れを…」私がそう言うと、何故か皆が楽しそうな顔になる。
皆がこういう表情を見せる時は大抵何かを考えている時で…


私は背中に嫌な汗を感じながら席についた。














「う゛おぉい!!聞いてねえぞ!!」
「なんで私まで!?」

遅れてきたペナルティだと、私とスクアーロの手に渡されたのはウェイター、ウェイトレスの制服で。
なんでも、ルッス姉のお手製だとか…。

自分のを広げてみると、何の商売だよ!!とツッコミを入れたくなるようなデザインで。

「これを着てお給仕しろと…!?」
「ええ、そうよ、素敵でしょ?早く着替えてらっしゃい」

急かすように言われ、何か言ってもらおうとスクアーロを見上げると、不意に手首を掴まれた。

「おい、行くぞぉ…」
「へ!?行くって、本当にこれ着るの!?ねぇ、ちょっと!!」

そうして私はなすすべもなく、スクアーロに引きずられ、元いた部屋まで連れて行かれたのだった。













「ねぇ!!本当にやるの!?あんなの、ただはめられただけなのに!?」

部屋に着き、スクアーロは無言のまま着替え出した。
私の不満も聞いてるのか聞いてないのかわからない。

「お前はここでゆっくり着替えてろぉ…」

私の言葉を遮りそう言い残して、ウェイター姿のスクアーロは自室から出て行った。

「着替えてろって…」

改めて見るが、やはり通常のものではなく、フリルは多様するわ、胸元は大きく開いてるわ、スカートは短いわで、制作者の趣味を疑う。

「でも、このままで許してくれる人たちじゃないよね…」

そう、彼らはとことんやる。
殺しも、悪戯も。

「はぁーあ…」

私は大きくため息をついて、のそのそと着替え始める。
そういえばスクアーロの服は割と普通だったな…。

ついに全て着終わってしまうと、見た目にも増して、際どい。
嫌々部屋のドアを開け、廊下に人がいないのを確認。
うん、今なら誰もいない。

侵入者のごとくコソコソと廊下を進む。
私を動かしてるのは、ただただ早く罰ゲームを終わらせたい気持ちだけだった。

最後の角が見えた時、誰かの足音が聞こえた。
私は咄嗟に柱の影に隠れる。
息を殺して、こっちに来ないようにと祈る。

近づいてくる一方の足音に、最悪の場合は殴りつけて意識を失わせようと、決意する。

その足音は急ぎ足で。
今だ、と飛び出して拳を振るえば、ぱし、と容易に受け止められ、気づいたら、宙に浮いていた。

「ス…スクアーロ!?」

「待ってろと言っただろぉぉ!!」

担がれたまま部屋に運ばれ、ベットに乱暴に落とされる。

「え、あ、えと、罰ゲームは!?」

立ち上がりながら問えば、「終わらせた」の一言。

ボスたちを満足させるのに、こんな短時間で終わるなんて信じられない…

さっさと着替えたスクアーロは、どかりとティーテーブルに座る。

「なんか、ごめんね。スクアーロ一人に全部やらせちゃって…」

明らかに機嫌の悪い彼に恐る恐る声をかければ、手元にある空のティーカップをこちらに突き出してきて

「お前は俺にだけ茶を淹れろぉ…」

「えっ……あっ。うふふ、わかった」




私は紅茶を入れながら、口元が緩んでしまう。
だって、スクアーロのあんな顔見たら、何を意図してるのかわかっちゃうんだもん。大好きなスクアーロのために、とびっきり美味しい紅茶を淹れてあげよう、なんてこっそり意気込んでしまう。


それを見たスクアーロが小さく舌打ちをしたのは、言うまでもない。


「んな服装、他の奴らに見せれないだろぉぉ…」

「ふふっ、スクアーロ大好き!」






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