貴方の月
お礼文(ダテサナ)
「幸村ぁ!」
すぱーんという襖の音と共に現れたのは、蒼い竜だった。
「政宗殿!!」
馴染みの忍に説教をされていた幸村は、助かったとばかりに政宗に駆け寄った。
「ちょっと、旦那!まだ話は終わってないんだけど!!竜の旦那も、邪魔しないでよね」
「Ha!相変わらず口うるせえ奴だなぁ。説教は終いだ。俺はコイツに用があるんだ」
幸村の肩を寄せて言い放てば、その忍、猿飛左助は大きなため息をついてその場を去った。
「政宗殿、今日は何用が?」
肩を寄せられたままの幸村が見上げてくる。
その上目遣いに、つい顔をほころばせてしまう。
「用がなきゃ、honeyに会いに来ちゃ悪いか?」
「いえ!寧ろ嬉しゅうございます!!」
耳と尻尾の幻が見えそうなほど、目をキラキラさせる幸村は、やはり可愛いと思ってしまう。
「ところでよ、アンタは何で猿に説教されてたんだ?」
つまみ食いでもしたのか、と尋ねると、一度うっと唸ってから幸村は言い訳を開始した。「月が…見えておったのです」
「月?」
幸村は、何を思い出しているのか、薄く頬を染めながらまだ明るい空を見上げている。
話によると、夜に目が覚めた幸村はふと外を眺めたところ、その空に浮かぶ月に見とれてしまったらしい。
昨夜はその月を見ながら眠ってしまったらしく、それについて保護者役は説教をしていたようだ。
「アンタが月たあ珍しい。しかも昨日は満月でも何でもねぇだろ?」
以前幸村は満月を見て、旨そうだともらしていたことがあったが、ほんの数日前に新月であったのだから、昨夜は満月であったわけでもない。
「そっ…それは……」
さらに頬を赤らめて話し兼ねている幸村を催促する。
すると一言、「笑わないでくだされ」と言ってから続けた。
「昨晩は…それは綺麗な三日月でござった。何か惹かれるものがあり、見つめておりましたら……その………政宗殿を…」
そこまで聞いて、自然と自分の口角が上がるのを感じる。
「so cute!!」
そして、思うがままに幸村を抱きしめれば、おそるおそる背に回される手。
それに気を良くして、染まった頬に軽く口づける。
「よし!今夜は月見するぞ!!」
その晩、二人は並んで腰掛け、空を見上げていた。
「あの鋭く美しく輝く月を見つけたら、政宗殿が側におるような気がしたのでござる」
そうして安心して眠ってしまったと。
幸村はそう話してくれた。
「アンタとbattleするのも、アンタと夜を過ごすのもいいが、たまにはこうやってるのだけなのも楽しいもんだな」
涼しくなった夜風の中、どちらともなく重なった手のぬくもりが心地よかった。
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〜2011.12.9
clapお礼文
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