気づく瞬間





名前は今、ツナの家の前に立っている。

この状態でもう10分たった。

やはり男子の家へ行く、というのは緊張する。

だからあの二人が来たら一緒に入ろうと思ったのに…。

約束の時間はもう過ぎている。
先に入ってしまったのか。
あまり遅れるのも失礼なので、そろそろ勇気を出す必要がある。


名前が思い切って玄関のチャイムを押そうとしたその時、ガチャリとドアが開いた。

ドキリとしたのは一瞬。
中から出てきたのは見慣れた顔だった。

「あ、名前ちゃん、いらっしゃい。
獄寺君はビアンキがいるからとか言って、山本は部活の呼び出しがあったとかで、二人共来れなくなっちゃったみたい。」


それではいくら待っても来ないはずだ。


自分はどうしようかと考えていると、ツナが先に提案した。


「獄寺君が解き方を書いた紙をくれたから、一緒にやらない?」

こう誘われて、名前としては断れない。

こうして二人だけの勉強会が始まった。





学年トップだけあって、獄寺のアドバイスは的確だった。

二人はすぐに宿題を終わらせ、暇になった。


「あ、あのさ、ランボ達今日はいないの?
ビアンキも…。」


静けさに耐えられなくなった名前が口を開く。

「え、ああ、元気過ぎて困ってるよ。
ビアンキはナントカっていう薬草がどうとかでチビ達連れて出て行ったよ。
早く教えてくれれば獄寺君も来れたのにね。」

「あははっ!そうか」

一応相槌をうっているのの、名前は内心違う事を考えていた。


チャンスは今しかないと。


「あ…あのさ、ツナ…」



「あ、ちょっと待ってて。
お菓子取ってくるねっ!」

「え、あ、うん…!
ありがとう」

ツナは何かを感じた。
ぬか喜びかもしれない、という思いと共に…。

しかし名前はそれを知らない。


(もしかして名前ちゃんは俺の事…?
いや、さすがにそれはないな。
何企んでるんだろ…?)


(もしかしてツナにうざったく思われた?
でもそれなら…)



それぞれの思いは伝わらない。




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