ほほえみ


4



あまりの驚きに、何を食べているのかわからないまま夕飯が終了していた。


「ごちそうさま。
なかなかよかったよ」

「あっ!
そ…それならよかったですっ!
えへへ、なんだか嬉しいですね」


雲雀の声で我に返った名前は、続いた言葉に思わず笑みをこぼした。

「君って凄く笑顔が似合うね」

「えっ……?」


「……。」

「………。
あ、あの、TVでも見ます?」


自分の顔がかっと赤くなるのを感じた名前は、沈黙に耐えられずに話題を変えた。


「…ああ。そうだね」

「何がいいですか?」

「普段は殆ど見ないから、いつも君が見ているのでいいよ」

「そ…うですか。じゃあ…」

同じ番組がやっているのか不安になりながらチャンネルを変えると、今話題のバラエティー番組がやっていた。

これで雲雀さんの笑った顔が見れるかな?
そんな事を思いながらTVに夢中になっていると、
ふと隣から視線を感じ、そちらを向けば雲雀がこちらまじまじと見ていた。


「な…なんですか?」


「ああ…なんか今の君の笑顔、凄く……」

「えっ……?」

「いや、何でもないよ。」

な…何だったんだろう

バッチリと目が合うと、雲雀はすぐに視線を画面に向けてしまった。

それをみた名前も、同じく画面に視線を移した。


その後雲雀は何事もなかったかのようにTVを見ていた。

しかし、やっぱり気になる名前は、ちらりちらりと雲雀の方を見てしまう。


CMに入ったその時

「君、何でそんなにちらちらこっちを見てるの?」

「え…!あ…えと…何でもないです…。」

「ふうん。そう。僕はてっきり誘ってるのかと思ったよ。」

「なっ…なに言って……!」

「赤くなって可愛いね。」

「!!!」

雲雀は、終始今まで笑顔を見せたことがないとは思えないような、挑戦的な笑みを浮かべていた。

「君、僕の笑った所が見たいって言ったね。
君の前ならいくらでも微笑んであげるよ…」

「え…それはどういう…」

視線を左右に泳がせながら問うてみると、雲雀は一度ゆっくりとまばたきをした。

もう一度開かれた瞳には、一種の炎が灯されているようだった。

「どういう事か?こういう事。」ドサッ

雲雀はそう言うなり名前をソファーに押し倒した。


「なっ……!」

スプリングによって軽く跳ねた身体は、小さく震えていた。

それが、恐怖からのみではないのだと、名前の頬の赤みが語っていた。





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