核-コア-



 私は今日携帯電話を買った。

それは不思議なお店だった。
お店、と言うよりは出店、という感じだろうか。


学校の帰り道、薄暗い田んぼ道の端っこにその店はあった。

最初は人が座っているだけだと思ったのだけど、近づいてみると、小さな箱の上に、たった一つの携帯電話が。

「お嬢さん、これ買わない?」

不思議な雰囲気をまとった人が帽子を深く被ったまま呟いた。
私はその不思議さに惹かれていた。
そして思わず買ってしまったのだ。

「買ってくれるんだね。それは、そのまま使えるからね。」

店員(?)はそう言うなり小さな箱を抱えて夕闇に消えていった。



そして今、私はこの携帯を手にして30分程頭を抱えている。

明らかにおかしい。

だって、ボタンがたった一つしかない。
とりあえず押してみる。

「うわっ!」

小さな叫びと共に…何か変な"人"が出てきた。
と、言うか携帯はどこへいったの!?

その"人"はいわゆる妖精のようなサイズ、見た目だった。
光輝くような見た目。

「お、新しい持ち主や!」

その"人"は話しだす。
見た目とは裏腹に、ペラペラと。

「ウチはいろんな人のトコに行ってたんや。
でもどいつもこいつも乱暴やね。
゙携帯のくせに使えない!"とか言うてあっちこっちに投げたり、落としたり。
あんたもそうなんか?」

私は物を大切にする方だと思う。
幼稚園の頃のハサミだってまだ現役だ。

「あ、ほんま?よかったー。
じゃあ何かくれへん?
お近づきの証や!」

何かくれ、などと言われたが、正直、何もない。

「えーマジで何もあらへんの?
そんなぁー!
…ん?あ、嬢ちゃんそのイヤリングでええわ!」

そのイヤリングとは、そいつの乗っている机の隅っこに置いてある、金具が壊れてしまったものだった。
本当にこんなものでいいのだろうか。

「ええよ!
それ、そこの穴に紐通してくれへん?
そうそう。
おっ!いいねぇ。」

そう言うなり自分の首にかけて、ポーズをとっている。
まったく、何をやっているのか。

というか、コレは誰…?

「あ、そうや、ウチは嬢ちゃんの買った携帯電話のコアや。
中心体ね。」

…よくわからない事を言うなぁ…
なんて考えてたら、『あ、もう時間や!』なんて言って彼は消えた。



その瞬間、私は強い眠気に意識を奪われた。

次に目が覚めたのは、次の日の昼だった。
今日が学校の休みの日でよかった。

変な夢を見たな、いつから寝ていたんだろう…そういえばリアルだった。

なんて考えながら何となく新しい携帯を開く。

普通に、わかりづらい程のボタンが並んでいる。

でもその携帯には見覚えのあるイヤリングが紐を通されてストラップホルダーについている。
びっくりしていると、どこからかメールが来ているのに気がついた。

おそるおそる メールを開いてみた。


『やあ、おはよう。
これからよろしゅうたのんますわ!
嬢ちゃん♪』



― そのメールに送信者はいなかった。―



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関西弁間違ってたら申し訳ないです…!

葵都


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