招き入れる




「はぁ……」

メールを送るのに二時間かかった。

そして、日本の家の前をウロウロして既にどの位経っただろうか。

何度も手を伸ばし、しかしインターホンを鳴らすことにためらう繰り返し。
着いた時に綺麗な朱色だった日も暮れ、一番星が輝きはじめた頃、不意に玄関が開いた。

「うぉ……」

「おや、イギリスさん」

日本は慌てる素振りも見せず、自宅に招き入れてくれた。

「どうぞ、粗茶ですが」

「お…おう。……すまない」

至極緊張した様子で日本茶をすするイギリスを、日本は微笑みながら見つめる。

「夜桜も綺麗ですが、今日はお疲れでしょうから、明日またお花見に行きましょう。
お風呂とお部屋の支度ができているので、ゆっくり休んでください」

相変わらず準備のいい日本にはいつも感心させられる。


熱い日本茶を飲み干し、促されるまま部屋を出ようとした時、後ろから声をかけられる。

「おやすみなさい、イギリスさん。
明日は、そんなに緊張されなくて大丈夫ですよ」

クスリと笑う日本を真っ赤な顔でチラリと睨めば、蔑むでもなく柔らかく笑んだ目と合い慌てて逸らす。

イギリスは一言、おう、と残して逃げるように部屋へ向かうことしかできなかった。


「明日から楽しみですね…」




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