雲命2







気づいたら雲雀さんを引き止めていた。

「離してよ」

「嫌です…」



今になって気づいた。
雲雀さんに突き放されて、やっと。



「君さ、今が夜で、僕と君しかいなくて、どういう事かわかってる?」

厳しい表情で、厳しい口調で言われるが、私は雲雀さんの腕を握ったまま動けない。

すると、長く息を吐いた雲雀さんが私を引っ張ってゆく。
私をソファーに座らせ、自分は壁にもたれている。

「雲雀さん…私が、下っ端の私が言っていい事じゃないかもしれないですけど、…」

「なら言わないで」

「…っ」

想いを伝える事さえ拒まれて、こらえていた涙が零れてしまった。
それは、止めようとすればするほど溢れてきて、すぐに手では拭いきれなくなった。




「…ねえ、どうして骸にキスさせたの」

俯いて顔を隠していた私の顎を掴んで上を向かされる。
気づけば雲雀さんは私に向かい合って屈んでいた。
それでも一度溢れ出した涙は止まらなくて、次々と頬を伝って膝に落ちる。


「無防備だよ…。あいつは、僕の大切なものにばかり手を出すのに」

少し悲しげな雲雀さんの瞳はゆっくり閉じられ、そのまま口付けられる。


驚きで涙も止まり動けずにいると、唇を離した雲雀さんは目を細めて口を開く。

「やっぱり、こういうのは僕からじゃなきゃね。……好きだよ、名前…」



本当に、今日は何が起こっているのかわからない。
だけど、溢れる涙はさっきとは違っていて。


「僕は群れるのは嫌いだけど、君とは一緒にいてもいいと思うんだ」



「だから君も僕以外誰とも群れないで」


そう言って涙を拭ってくれる雲雀さんの手は少しひんやりしていて、火照った頬に心地よかった。


「骸は後で咬み殺す」

そう言って、再び唇を重ねる。
キスの上書きとでも言うように、何度も何度も。


その強引で、だけど優しいキスに、私は溺れていく。



「骸とのキスなんて思い出せないようにしてあげるよ」



そう意地悪に笑う雲雀さんに、やっぱり胸が鳴ってしまうのは、幸せな証なのだと思う。







 雲雀夢 fin




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