雲命1




二人から強引にキスをされて数時間。


自室に戻り寝支度も整えたものの、どうしても目が冴えてしまう。

「どうして……?」

そっと自分の唇に触れてみるも、思考が受け付けないのか、自分のものではないみたいだ。


二人と知り合って数年、まさか、こんな風に頭を悩まされる時が来るなんて思っていなかった。
二人ともボンゴレのエリートもエリートで、私みたいな雑務担当なんかが本来関われるような人じゃない。

「なんで私が……」

何を考えても何も思いつかなくて、ベットに頭まで潜り込む。
すると、扉をノックする音が聞こえた。

今はあまり人とは会いたくないが、アジト内に住まわせてもらっている限り、無視するわけにもいかない。

「はい……えっ…」

扉の向こう側にいたのは雲雀さんだった。
群れるのが嫌いな雲雀さんが自ら誰かの部屋を訪ねるなんて、珍しい。

「あっ、ちょっと…」

私が呆然としていると、不機嫌そうな雲雀さんは無言のまま部屋に入ってきた。

「扉、閉めなよ」

「は…はい…」

いつになく機嫌の悪そうな雲雀さんに口答えするほどの勇気もなく、体の前で静かに扉を閉める。
そうして雲雀さんに向き直ろうと振り返った瞬間、目の前にトンファーが飛び出してきた。

「きゃ…!!」

何の反応もできずに体を固くして目を強く瞑る。
しかし来ると思った衝撃はない。

恐る恐る目を開いてみると、こめかみすれすれの所で止められていた。


「君、無防備すぎだよ」

眉間を寄せてトンファーを突き出している雲雀さんは、見るからに怒っている。

「す…すみません…」

恐怖心が前に出た私は自分の手が小さく震えているのに気づいた。

「君に謝って欲しいんじゃないよ。君がどうしようと君の勝手だからね」

雲雀さんはそこまで言うと、少しだけ弱く続けた。

「ただ、君が群れているのを見るのは不快なんだ。特にあいつとは…」

トンファーはゆっくりと手元に戻され、解放されたというのに、私の体はまだ動かない。


「だから、君は誰とも群れないでくれる?」

言葉こそ疑問形ではあるが、その口調には命令の意が表れていた。

そして、そこまで言うなり私の横をすり抜けて、扉に手をかけ出て行こうとする。


私は胸の中のもやを拭うことができない。
そう、まさに重たい雲が絡まっているようだった。


「いや……です…」

その雲は一気に私の心を埋め尽くし、気づいた時には言葉として溢れ出していた。

雲雀さんに楯突くなんて、と頭では思うが、心を埋め尽くした雲には適わなかった。











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