俺にまかせとけよ
柔らかな朝日がジリジリとしだす頃、ダラダラとした授業の区切りのチャイムが鳴った。
「おはようございます、10代目!」
「あっ、獄寺君。おはよう。…って、今二時間目終わったよ?」
「気にしてないんで大丈夫です!」
そんなやりとりがされているのは並盛中2年の教室。
当然のように遅刻して来た銀髪の生徒の名は獄寺隼人。
10代目と呼ばれたごく普通の生徒の名は沢田綱吉だった。
「ははっ獄寺はまた遅刻なのな」
横から笑うのは野球部のエース、山本武だ。
「うるせぇ、野球バカ。
俺がいない間、ちゃんと10代目をお守りしたか!?」
朝から一方的な喧嘩が始まったのを見て、慌てて止めに入るのは、いつもツナの仕事だ。
「山本とずっといたし、俺は大丈夫だから!!
っていうか、よく雲雀さんにバレなかったね」
風紀委員長の雲雀に遅刻が見つかれば、ただで通してはもらえないだろう。
獄寺の様子からすると、雲雀には会わなかったようだ。
「今朝、並盛の風紀を乱す不届き者の果物を狩ってくるって言って出て行ったって、風紀委員が言ってたぜ?
雲雀って果物狩り好きだったのなー」
「山本、多分それ果物狩りじゃない…」
獄寺はといえば、ツナの引きつった顔をぼーっと眺めている。
「獄寺どうした、ぼーっとして?調子でも悪いのか?」
その言葉にはっとして、山本をひと睨みしてからツナに向きなおる。
「すみません10代目。
10代目とコイツを二人にするつもりはなかったんです。
今朝10代目をお迎えに行ったら姉貴に会ってしまって…」
「そっか…ごめん。
俺、今日は日直だったんだ…。
獄寺君大変だったんだね…」
その言葉を聞いて、自分を気遣ってくれる心に感動しつつ、ボスが日直なのを知らないのは右腕として失格ではないか、と自分を悔やんだ。
自分を殴ってやりたい衝動に駆られていると、山本は時計を見て、あっと声を漏らした。
「次、理科室に移動じゃね?
やっべ、俺宿題やってねえや。急いで埋めてから行くから、先に行っててくれ」
言いながらガサガサとプリントを出す山本を鼻で笑い、ツナと山本の間に入る。
「はっ。やっぱり野球バカだぜ。10代目は俺に任せとけよ」
そう言う自分の顔が綻ぶのを止めることはできなかった。
心中うきうきのままツナへ視線を移せば、ツナも一度こちらを見てから山本へ一言声をかけていた。
「じゃあ、獄寺君と先に行ってるね。行こっか、獄寺君」
「はい、10代目!」
10代目のお誘いなら何でも乗ります!
と、無駄に気合いを入れて教室を出た。
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