「あ、白石くん。少しええ?」
「……」

忍足謙也
一目で目につく金色の髪とか、言葉遣いの荒さとか、いかにも自信満々な態度とか、意地っ張りな所とか、その癖ビビりだったり、正直第一印象から俺の苦手なタイプだった。変わった奴だと、興味はあったが、できるだけ関わらないようにしようといつも遠巻きで見ながら思った。
しかし思った矢先にこれだ。まさかの同じクラスで同じ部活。
しかも今は、クラスメートは下校してがらりと静まり反った教室に俺と忍足謙也の2人っきり。俺は忘れ物を取りに教室に帰ったら、なぜか忍足謙也が偶然教室にいた。どうやら俺はかなり運が悪いらしい。
どちらも話したことは無く、気まずい空気が流れた。この空気から早く逃れる為に忘れ物を取って後にしようとしたが、忍足謙也に呼び止められた。
忍足謙也は2mほど前に立っていた。そして、あの活発な忍足謙也がどこか申し訳なさそうに口を開いた。

「俺…白石くんになんかした?」
「…は?」

何をいきなり言い出したんだ。バカな性格だろうとは前々から思っていたが、まさか妄想癖というものまで持っていたとは思わなかった。一度も話したことがない俺になぜ「何かしたか」と聞くのかわからない。
まだ理解を出来てない俺に気付いたのか、忍足謙也はしどろもどろに話した。

「え、あ、いや、白石くんいっつも睨んでくるやん…それで、俺なんしたんやろかって思って…俺なんかした?」
「…別になんもしてないけど。それに」

睨んだ覚えなんかない。そう言おうとしたが、忍足謙也は前者だけを知りたかったらしく、前者を聞いた瞬間に安堵の息を吐いて

「そういや白石くん、テニス部やったよな」
「…おん、」
「良かったら仲良うしてや。和解記念に!」

はい、と手を差しでしてきた。
和解も何も俺は何も蟠りは無かったし、元を辿れば忍足謙也の勘違いが始まりじゃないか。ずいっと出された手を握ると、忍足謙也は嬉しそうに綻んだ。
刹那、ドクリと心臓が跳ねた。
待て待て待て、なんだこれは。感じたことのない脈動、繋いだ手が熱くなる、目の前の人物から目を離せない。教室に差し込む夕焼けのせいか、酷く鮮明に見える。

「よろしゅ…どないしたん?」
「あ、あああ、俺、帰る…!ほ、な明日」

勢いでドンッと足にぶつかった机も痛かったが、それ異常に息が出来なくなるほど苦しかった。走る足は早くなる。




睨んだ覚えはない。
ただ、興味本意で遠巻きに見ていただけで睨んだ覚えはないんだ。
興味…なんで興味があった?
なんで忍足謙也を見た?
ふざけるな。これでは…

─違う
──違う






これは断じて恋なんかじゃない!









end












初恋蔵謙です!
中1っぽいというか、小学生っぽい白石を目指したらとてもガキっぽくなりました…orz
思春期とか反抗期大好きです!

リクエストありがとうございました!




















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