謙也が居なくなってから、もう5年が過ぎようとしていた。歳も19になった。それでも、裏山に足を運んでしまうのはまだ未練があるから。
会いたい、という気持ちは5年間ずっと錆びれることはなかった。ただ、ずっと帰るかもわからない彼を待ち続けた。
たった1年しか一緒に居なかった相手をこうして5年も待ち続ける自分は、きっと周りからはバカらしく見えるだろう。
それでもいい、ただ待ち続けるだけでいつかは彼が帰って来てくれるような、そんな気持ちになるから。
自分は昔とは変わってしまったが、気づいてくれるだろうか。もし、気づいてくれなかったら自分から話しかけに行こう。まだ、変な形した消しゴムは好きなのだろうか。あのとき飼っていたイグアナはどうなったんだろう。
帰ってきたら、彼には聞きたいことが沢山あった。これから、ゆっくり聞いていくのもいいかもしれない。そんなことを胸に秘めて、今日も帰ってこないであろう彼を待つ。
「会いたいなぁ…」
口に出すと無性に会いたくなる。
そろそろ、空も暗くなってきた。景色をもう一度眺め、踵を返そうとしたとき─
──白石
名前を呼ばれた。
どうやら、自分は幻覚が見えるまで重症になっていたらしい。
だって、そこに謙也がいる。
「ただいま!」