ピッピッピッピッ──
ベッドに横たわるのは昨日まで一緒にいた友人。病院特有の薬品の匂いと何本もぶら下がるチューブが白石を包む。
「…白石…?」
問いかけても返事は帰って来るはずはなく、ピッピッと無機質な機械音が静まり返った室内に鳴り響く。
昨晩、四天宝寺中の裏山で意識不明で倒れている白石が見つかった。倒れてからすぐに通報があったらしいが、救急車が呼ばれ着いた頃には、倒れている白石以外誰の姿もなかったという。
「白石…ごめん…」
沸き上がるのは、昨日気付いたときに止めるべきだったという後悔と自分に対する苛立ち。そして思考が麻痺しそうなくらいの悲しさ。涙も出てこない。腹の中をぐるぐる渦巻くのは悲しさか、苛立ちか。それすらも分からない。
ただ呆然と眠る彼を見つめた。
白石はなぜ倒れたのか
呆然とする頭の中に1つの疑問が上がった。
なぜ体調を悪くした、なぜ悪化ばかりする、なぜ───
考え出すと疑問は溢れるほど出てきた。答えを見つけ出そうと脳をフル回転させるが、答えはでなかった。ただ分かることは一年前は元気だったということ。最初出会ったときはこんなに痩せこけてなかった、こんなにしんどそうではなかった。ああ、なんだそうすれば答えは簡単じゃないか。
───俺に出会ったから
絶望的な答えはどこか自分を納得させるものだった。多分、どこかで薄々勘づいていた。
数年前に亡くなった祖父との症状が完全に一緒だった。日に日に濃くなるクマと、痩せこけていく体。そして、強がって優しく笑って見せる姿。重なるものは沢山あった。ただ、信じたくなくて、離れたくなくて、俺は気付かないフリをしていただけかもしれない。
間接的にか直接的にかは分からない、ただ俺が白石もじいちゃんも苦しめた。
こんなの人殺しじゃないか…
予想はいつしか核心的なものへと変わりつつあった。