「雨やまんなぁ…」

ザーザーと激しい音をたてて降り続ける雨に思わず溜め息が漏れる。玄関でひとり待ち続けるが白石と千歳は来なかった。特にする事も無いので玄関から外を眺めるが激しい雨のせいで視界は晴れない。

「謙也、」

名前を呼ばれ振り返ると、そこに立っているのは千歳だけで白石の姿は無かった。

「白石は?」
「ちっと休んでから帰る言うとったい。先帰っとってて…」
「大丈夫なん、白石?」
「…大丈夫。だけん帰ろ謙也」

激しく降り続ける雨の中を走る千歳の後を言われるがまま付いて帰った。どこか浮かない顔の千歳に疑問を持ったが、雨が全てを隠すように降り続けた。

その日、結局白石に会うことは無かった。




次の日は昨日の雨が嘘かのような気持ちが良いほどの快晴だった。
休日は大抵家にいるか、白石が部活のないときに遊ぶかのどっちかだった。いつもなら、金曜日に約束をして土曜日に遊んでいたが、昨日は会うことも無かったし特に連絡も無かった。
俺から連絡を入れてもよかったが、近頃の白石の様子を見ていると到底誘い出せるものではなかった。
今日はゆっくりしてほしい。だから連絡は入れなかった。
昼を過ぎたころにインターホンが鳴り響いた。また新聞か何かの勧誘だろうと思い玄関を開けた。だが次の瞬間、そこに立っている人物に目を丸くした。

「白石……」
「謙也…ごめん、少し話したいねんけど」
「あ、入ってええよ」

白石が立っていたことに驚いたのではない、昨日よりも確実に悪化している体調の悪そうな顔を見て驚いた。歩き方もどこかよろめいている。

「白石、大丈夫なん?昨日も」
「別に気にすることやないから…大丈夫。」

見るからに大丈夫そうではない顔色で言われても信じることはできない。帰った方がいいのではないか、と進めてみるが白石は頑として首を降らなかった。

「謙也、俺のことはええから。ちょっと話聞いてくれん…」
「…うん」

白石は何かに踏ん切りをつけるかのように俺を見た。視線がぶつかった。視線を避けてはいけない、瞬きさえもしてはいけないような感覚になった。どくどくと心臓が早まる。

「謙也と最初に友達になったときんこと覚えとる?」

白石の問いかけにコクりと首を縦に降ると、白石は少し嬉しそうに微笑んだ。忘れるわけない。初めて友達ができた瞬間なのだから。

「謙也とあんときに友達になれてほんま良かったって、いつも思っとる…」
「……」
「これからもずっと謙也とおりたい…ずっと」
「お…俺も白石とずっとおりたい」
「良かった…」

白石が本当に嬉しそうに微笑むものだからつられて俺も頬が緩む。しかし、なぜだかわからないが悲しさが沸き上がってくる。良かった、そう呟かれる言葉には嬉しさに隠れたどこか悲しみを帯びたものが見え隠れしていたような気がした。


「謙也、俺な…今日大切なこと伝えに…来たんやけど」
「なん?」

「…ごめん」

言葉が発せられたのと同時に唇に何かが触れた。そして思いを流し込まれた。
ワンテンポ遅れてキスをされたのだと気づいたとき、キスをとされたことに気づく。同時に送られてきた思いに顔を赤くする。

「白石…」
「いきなりでごめんな…答えはまだええから…」

笑おうとする白石の顔は苦しそうに歪められたものだった。限界だ、白石の姿を見てそう感じ取った。白石もさすがに限界を感じたのかよろめく足取りで立ち上がった。

「ほな、今日はもう帰るわ」
「うん…」

「バイバイ、謙也」

「え、あ、バイバイ…!」

玄関から出ていく白石の姿を見てなぜか無性に泣きたくなった。

その夜、白石が倒れた。

















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