「今日、変な人が転校してきてん」
「へぇ、どんなん?」
「心が読めへんかった、全く。手を繋いでも真っ白でなんも読めへん、そんな奴」
「……読めんかったんか。力が弱なっとるとかでは無いん?」
「そんなんや無いと思う。アイツも異質なんやと思う…多分」
確信は無かったが、最初に感じた違和感は多分同じ異質な力を持つから感じ取れたものだと考える。しかし、千歳という男は朝から人気者でワイワイとみんなから質問攻めにあっていた為、話を聞くことが出来なかった。
「謙也はその人のことどう思ったん…?」
「なんや、ややこしい奴が来たな思ってんけど…話はしてみたい」
「そか…」
白石はどこか伏し目がちで答えた。何か、変なことを言ったのだろうか。手を握ればすぐに分かることだが、白石には出来るだけ触れないと決めている。というよりも怖いのだ。もし触れたときに自分を遠ざけるようなことを思っていたらどうすればいいのか、今の自分にはわからない。
臆病だと笑われてもいい。それくらい、今の場所が居心地良かった。
「謙也、俺もその人と話してみたいんやけど…探さへん?」
「弁当いいん?」
「近頃、食欲無いから今日はもうええわ」
「…大丈夫?」
「大丈夫やって!元気やし!心配せんでええよ」
にこりと微笑む姿は男の俺でも見惚れるものだった。
しかし、白石の体調が悪いのは見るからも同然だった。元々引き締まっていた体はここ一年で細くなった気がする。目の下の隈も最初のうちは近くにいないと見えないものだったが今ではハッキリ見える。何か、患っているのだろうか。急に祖父のことを思い出して嫌な予感が頭を駆け巡った。
それは無い、と頭を降って除外した。
「ほな行こか」
「…うん」
元気に振る舞う姿もどこかで見たことがあるものだった。