3月29日

『誕生日おめでとう』

俺の誕生日。
何通目だろうか友達から送られてくるメールを見て落胆するのは。友達からお祝いメールを貰うのは嫌な訳ではない、寧ろ喜ばしいことだ。だが、落胆してしまうのは、多分ある男のせいだろう。

すでに何通かのメールを貰っていた。何度も何度も確認をするが『桃城武』という名前はディスプレイに写し出されない。何十回目であろう溜め息を吐く。
誕生日プレゼントを貰いたい訳でもなければ、別に愛の言葉を語って欲しい訳でもない。ただ純粋に声が聞きたかった。自分が生まれた日一番に桃城武の声を。
我ながら女々しいものだと自覚はある。

ベッドに仰向けで寝転がり携帯を開く。やはりディスプレイには期待している文字は現れない。目を閉じたら大きく吐き出された溜め息は虚しく部屋に響き渡った。

「…バカ」

無意識に溢れた言葉の直後、返事をするかのように携帯が鳴り響いた。勢いよく体をお越し携帯を開くと、待ち望んでいた文字が並んでいる。高鳴る心臓を押さえ着信ボタンを押す。

「もしもし」
『あー荒井?』
「なんだよ…」

ぶっきらぼうに返事を返してしまうのは、緊張を隠すためのカモフラージュ。人一倍、人の考えに敏感な桃城に悟られないように麻痺寸前の脳を無理矢理働かす。

『外覗いてみろよ』
「は?」
『いいから』

何のことだか理解できず、言われるがまま部屋の窓を開け身を乗り出す。瞬間、目に写ったものに目を疑った。

「誕生日おめでとう!!!」

チャリに跨がったままバカみたいに手を降る男の姿。
いくら暖かくなったとはいえこんな時期に半袖を着て寒くないのか、近所迷惑だから声を落とせよ。お門違いな疑問ばかりが頭を過ったが、一番最初に口から出た言葉は案外簡単には滑り落ちた。
つくづく自分はこの男に惚れ込んでしまっているなと、再認識させられる。

「ありがとう」



Happy Birthday 荒井様!









うえだに捧げます(*´∀`)
29日以内にギリギリ間に合った…!しかし30分前とは…ごめんよ荒井さま!誕生日おめでとう!












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