「大人ってずるいよな…」
危うい呂律で目の前の男─ガイは呟いた。頬は赤みを帯び、いつも綺麗に伸ばされた背筋はだらしなく曲がり机にうつ伏している。完全に酔っている。
そんな彼はぼやくようにずるいずるいと言葉を漏らす。大人はずるいと彼は言うが彼も成人している身、大人の部類に入る人間だ。確かに、14も離れている私と比べればまだまだ子供な訳だが。
「じぇいどはずるいよ…」
「おや、私限定ですか」
こくりと頭だけを縦に動かし肯定を意味する。同時に、木の机に頭を打ち付けゴンと少し鈍い音が聞こえたがそこは聞こえないフリをする。ガイは机にうつ伏していた体を持ち上げ、ゆっくりとした視線でこちらを見た。乳白色の酒がゆらりと揺れた。
(なんて悲しそうな目をするんだ)
蒼色の双眼がそれを引き立てる。目に涙を溜め込んだ男の顔はいつもより幼く見えた─同時に美しいと思った。
「ジェイドはずるい…ずるいよ」
「何がですか?」
「俺のことなんて見ようともしない…俺はこんなに…」
アンタのことが好きなのに
ずるいのはどっちだ。
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ジェイ(→)←ガイ