「────っ」
誰かが呼んでいる。声を辿るように目を開けると、眼前に広がったのは、見たことのない男の顔だった。
「うっうわあ!!!」
余りの近さや目を開けたらまさかの見たことの男の顔やらで、寝起きの脳が着いていかず跳ね起きてしまった。
「おお!起きたんか!!死んだんかと思って心配したわ」
男は安否を確認して落ち着いたのか、ゴロリと床に転がった。
「えっと…俺…」
「昨日、兄ちゃん道端で転がっとったから俺が家まで連れて帰ってやったんやで」
「ありがとう…ございます…」
「なんで敬語やねん!俺がタメつこうとんやからお前もタメ口で話さんかい!」
「……」
なんだこの男は。
俺が今までで会ったことのない人種だ。これでも、色んな人に会ってきたと胸を張って言える。だが、こんな男にあったのは人生で初めてだ。
「兄ちゃん名前は?」
「……白石」
「名前は?」
「白石…」
素性を知られる訳にはいかなくて、がんなにと名前は言わなかった。男は考えを読み取ったのか否か、まぁええわ、と言って立ち上がった。
「白石、歳は?」
「18…」
「同い年やん!年上かと思っとったわ」
こんだけ落ち着いといて18かあ…と男はマジマジと俺の顔を見てきた。あ、と男は呟いた。
「そういや、なんで昨日あんなとこで倒れとったん?」
「………」
「まぁ別に言いたくないんやったらええけど。俺、そういうの気にせんタイプやし」
そう言い残すと男は、キッチンの方へ歩いてき、ご飯食えるか?と聞いてきた。
そういや、空腹のせいか少し力が入らない気がする。タイミング良く、ぐううと腹の虫が鳴いた。恥ずかしくなってバッと腹を隠し男を恐る恐る見ると、ニヤニヤと笑っていた。
「ほな待っといてな。あ、せやせや俺の名前は謙也」
数秒後にはキッチンからいい匂いが漂ってきていた。