季節は変わり目。空気は少し潤いを増し、ふわりと吹く風は生暖かく頬を滑る。
ああもうこんな季節か。と衣替えを始めた生徒達を見て再度確認する。
寒がりな自分には、少しこの季節に衣替えは早い。学校指定の黒い学ランに袖を通し、きっちりとボタンを絞める。こうすると自然と気持ちも引き締まるような気がする。テニス部部長として気を引き締めようとしているのか、それとも、隣で大あくびを掻いている彼に格好を付けたいのか。正直なところ、後者かもしれない。そんな隣の彼は、俺の格好なんて目もくれないで、うとうとと今にも閉じてしまいそうな目をごしごしと擦り、また大きなあくびを掻いた。あまりの、アホ面に軽く吹き出してしまった。それに気づいた彼は、不機嫌そうな顔をして睨んできた。

「笑うなや…」
「すまんすまん、気持ちええくらい大きなあくびをするもんやから」
「白石には分からんやろうな、この眠さが」

うーんと身体を伸ばしてコキコキと肩を鳴らす。おっさん臭い仕草やな、と内心呟く。

「まあ眠くても分からんやろうな」
「なんでや?」
「白石いっつも隙無さそうやし」
「…?」
「こうピシッとしとるっちゅーか完全無欠ちゅーか、なんやろな…かっこ良すぎて隙が無いように見えるんかもな」

さぞ当たり前かのように話す謙也を俺は他人事のように聞いていて、1,2とワンテンポツーテンポ遅れて意味を理解した。

「へ?」

そして間の抜けたような声がポロリと溢れた。当の本人はまた睡魔に襲われてるらしく、ぐらぐらと体が揺れていた。
こっちは心臓から身体中の血液までが活発化しているというのに。少し前を歩く謙也を見て溜め息を吐いた。

ああ、やっぱりもう学ランは暑いのかもしれない。











fin









匿名様へ捧げます!
遅くなって申し訳ありません><
蔵謙甘甘を目指したのですが…なんだか乙女な白石になってしまいました(´・ω・)

コメントありがとうございました!!
すごく励みになりました。
これからもカルシウムをよろしくお願いいたします!






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