ルフィ、ウソップ、ナミ、チョッパー、ロビン、フランキー、ブルック
──コック
いつも、アイツは俺の名前を呼ばない。仲間になって一度たりともだ。他の船員の名前は全て呼ぶのに、俺だけだ。普通は船員同士だから名前を呼び合ったりするものだ。なのに、アイツは頑として俺の名前を呼ぼうとはしない。ならなんだ?俺は、アイツに自己紹介をしなければいけないのか。『俺の名前はサンジです』と。そう言って呼んでくれる筈が無いのは分かっているし、俺の名前を知らない訳はない。俺の名前ならこの船にいる以上聞きあきるほど聞いている筈だ。主に船長がサンジメシ!サンジ弁当!と毎日のように叫び続けているのだから。
確かに俺もアイツをあだ名で良く呼ぶが、ちゃんと名前を呼んだことは何度もある。なのに、アイツは…
「で?」
ウソップは頬杖をついてふああと大きくアクビをした。キッチンの時計を見るともう夜中の1時を指していた。船内は静まり返っていたのにも、時間がこんなにたっていたのも、愚痴がヒートアップして全く気が付かなかった。
「結局、ゾロに名前を呼んで欲しいんだろ?」
「だっだだだ誰があんなマリモに!!」
「ばか!大声出すなって!みんな起きんだろ!」
「っああ…すまねえ」
いきなり何を言い出すんだ、あまりのことに大声を上げてしまった。平常心だ平常心を保て。
ふぅと深呼吸して、次は静かに喋り始めた。
「別に…そういう訳じゃなくてだな…その俺は名前を呼んでんのに不公平じゃねぇかって話だ。」
「不公平っておまえ…」
「俺は…その別にアイツに名前を呼んで欲しいとかそんなんじゃなくてだな、その…なんていうんだ、一応、仮にも、あくまでも、おれとアイツは船員なんだ…だから…そのだな、おい」
「まぁ…とりあえず落ち着け」
そうウソップに言われて口を瞑る。俺は、落ち着いて話そうとしているつもりなのだが、どうも饒舌気味になって何を言いたくて何を言っているのか分からなくなっているようだ。なんで、俺がマリモごときにこんなに悩まされなければならないんだ。だんだんと腹がたって自然とタバコに火を着けていた。
「じゃあ、一回ゾロに名前呼んでもらおうぜ」
「…へ?」
着けたばかりのタバコがポトリと床に落ちる。勿体ないと思いつつグリグリと右足で踏みつける。それよりも、まて、今この長鼻はなんと言った。俺の名を呼ばせるだと?まてまてそんな展開はお呼びじゃない。やめろ、やめてくれ、やめてください。
「じゃあちょっくらゾロ呼んでくるわ」
「まっ…!!」
待てと静止の言葉を入れる前にウソップはそそくさとキッチンを後にした。
俺は、ただただ呆然とウソップが出ていった扉を眺めていた。
ワンテンポ遅れて思考が追い付いてきて、逃げなければ、と勢い良く扉に向かって走って行こうとしたとき、扉の向こうでゾロとウソップの話し声が聞こえてきた。
「じゃあゾロ俺は寝るから」
「ああ…」
ヤバい、そう思った瞬間何を考えたのか机の下に隠れ込んでいた。どこのガキが考える隠れ方だと、自分が自分を恥ずかしくなった。ガチャリとドアノブが回される音がした。同時にビクリと肩が跳ねた。ギイイイイと扉が開く音が今は鮮明に聞こえた。
「おい、コック」
息を殺して、体の全ての筋肉を強張らせて、身を潜めた。なぜ、俺がこんなにびくびくしなければならないんだ。コツコツとゾロの歩く足音の1つ1つが床を通して鮮明に聞こえてくる。
「…いねえのか?」
ああ、馬鹿で良かった。そう内心でホッと安堵の息を吐き、早くこの場から去ってくれと心の中で何度も唱えた。チラリと視線をやると黒いブーツが扉の方へ向かっていった、よしそのままだそのまま、と机の下で丸まっていると云うことを忘れて、ただただ出ていくことを祈っていた。すると扉付近で足が止まった。
「………サンジ」
「……!!」
消え入りそうな声で呟いた瞬間、ドクンッと心臓が跳ね、カアアアと集中的に顔が赤くなるのが分かった。勢い余って頭を上げてしまい、ゴンッと鈍い音をたてて机に頭を打ち付けた。さすがに、その音に気付いたゾロはしゃがみこみ机の中を覗いた。一瞬、目を丸くして、居心地悪そうに目を泳がせた。
「…居たのかよ…」
「居ちゃわるいかよ!」
「いや別に…てかいつまでそこにいる気だ…」
今出ようとしてたんだよ!とテーブルからずるずると赤くなった顔を隠しながら出ていくと。なぁとゾロが呟いた。口許を軽く押さえ「今の聞いた…よな…」と少し頬と耳を赤くした仏頂面の顔と目が合った。
なんでそんな顔するんだよ。
と口に出せなかったのは、多分俺は、それより酷い顔をしていたからだ。
fin
ゾロサン好きすぎて今にも踊り出しそうな植木です!
ゾロサン小説初めて書きました><
というよりも今回のはゾロ→←サンですかね!
悩むサンジ書いてて楽しかったです!
ゾロサンについて24時間語りたいくらいです(^q^)