ちとけん←蔵 | ナノ



「白石くんって意外と酷いよね」

付き合ってすぐの彼女からいきなりそんなことを告げられた。まだ付き合って数日という期間しか自分と共有していないのに、自分のことを知ったかのようなそんな口振りに少しイラッとした。敢えて表情には出さず、そう?と聞き返すと、気付いてないの?と少し驚いた口調で聞き返された。
気付くも気付かないも、自分は彼女からの告白を受けて、付き合うことに承諾をした。なのにこの言われ用はなんだ。彼女は俺に視線を合わせた。手入れが行き届いている金色の髪がゆらりと揺れて、意識が自然と彼女の髪へと集まった。
白石くん、と少しきつめの口調で名前を呼ばれ、意識を髪から彼女の方へと持っていくと悲しそうに眉を寄せた彼女と目があった。

「そんなにこの髪が好き?」
「……」
「髪しか見てないよね。知ってる?白石くんって金髪の女の子ばっかりと付き合ってるって有名なんだよ。だから私もわざわざ金髪に染めたのに…」

私のことなんか全然見てくれない。今にも泣き出しそうな彼女の顔に俺は特に何の感情も持たず、ああ泣くんやな、とぼんやりと思ったが。ああ、これじゃあ彼女の言った通り本当に「酷い人」じゃないか。

「ごめんな」

何に対する謝罪なのかは、本当のところ自分でも分からない。ただ、彼女を代用と見ていたこと、彼女に見向きもしなかったこと、それに対しての罪悪感は多少はあったのだと思う。
金髪の髪をぼんやりと眺めながら、遠い昔の友人を思い浮かべた。




「白石!」

聞き慣れた声が俺を呼ぶ。振り返ると、やはりそこに立っているのは俺の大好きな友人。同じ中学に通って、同じ高校に進んで、そして一緒にテニス部に入った。一日の殆どを彼と共有できて、俺は本当に幸せだった。彼には友情以上の想いを抱いていた。彼はそんな俺の想いには気付いてくれないが、そんな鈍感なところも含めて好きだった。
金の髪を風に揺らせながら意気揚々と走ってくる姿に、自然と笑みも溢れる。

「そない急いでどないしたん?」
「え、っとな…あんな…笑わんと聞いてくれよ白石!」

いつもとどこか違う彼に違和感を沸いたのはその時だった。いつもなら何事も早く済ましたいから、パパッと用件を言って来る筈なのに少し頬を赤らめさせ、視線を泳がせていた。そんな彼を見るのは初めてで、嫌な予感がした。

「おれ、」

次の言葉に聞くんじゃなかったと後悔した。

「千歳と付き合うことになってん…」

サーとなにかが引いていくような気がした。それからの会話は覚えていない。次の日も普通に接してくれたから多分、ちゃんと応対はできていたのだと思う。
悔しかった。九州に帰って彼との時間を全く共有していないアイツに奪われたことが。俺はいつもいつも彼の隣に立って彼を見守っていたというのに、中学の一年間しか彼といなかったアイツが奪っていったことが何よりも悔しかった。
彼がアイツの話をするたびにザーザーとノイズ音が入る。大好きな彼の声を聞いていたい。でも今はそのアイツを想うその顔もアイツのを語る声も遮断してしまいたいんだ。
金の髪がゆらゆらと揺れる。ただ呆然と彼の髪に視線を向けた。
揺れる金髪は何一つ変わらない。












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途中でなにを書いてるのかわからなくなりまし((
上は大学生白石
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