目を覚ましたとき、俺は部室に1人だった。服もちゃんと着せられて、手のひらの傷には絆創膏がしてあった。そして、先程の事は嘘ではなかったと言うようにズキリと腰が痛む。
情事中、白石は一度も俺の名を呼ばなかった。だが、一度も目を反らしてくれなかった。欲情した瞳が自分を捕えていた。
気持ち悪いと思わなかった、嫌だと拒めなかった─否、気持ち悪いと思えなかった、嫌だと拒まなかった。全部、自分は承知の上で受け入れていた。
意識を飛ばす際に垣間見えた白石の今にも泣きだしそうな顔が、脳裏にこびりついて取れない。
「あほ…」
自分は何故か酷く冷静だった。一番最初など、キスだけで泣き出して学校を休んでいたのに。あのときは、白石の行動も自分の気持ちも理解を出来なかったからパニックを起こしたのだろうか。
今は理解をしてしまったから、こうやって冷静でいられるのかも知れない。ただ、白石の行動は未だに理解できない。
白石は俺がキライだ。
これは、天地がひっくり返っても変わらない。
俺が白石のことをどう思っていようと。