快晴、適温、絶好のテニス日和。
なのに─

「千歳ー」

今日もまた千歳探し。
部長命令により、見つかるかも分からない人物を探し歩いている。なんで俺が、と文句を何度もいい続けたが、俺が探しに行くと千歳を見つかる確率が高いとかなんとか。確かに、皆が探しに行ったら肩を落として帰ってきて、俺が行くと八割型見つかるが、それは、たまたま運が良かったとか偶然の部類だと思う。

「そう思わんか千歳」

木陰で眠る馬鹿を今日も偶然見つけて話しかけながら踏みつけると、んが、っと声を上げた。のっそりと巨漢を起こし、寝惚けた頭でキョロキョロと辺りを見回す様子が少し笑えた。やっと目が覚めてきたのか、俺を見て、あ、と声を漏らした。

「あ、やないわ。今日もお得意のサボりか?あ?」
「今日は絶好の昼寝日和ばい!」
「いや、そんな清々しい笑顔で言われても困るわ。はよ行かんと白石がツノ出して怒っとるぞ」
「怖かねー」

いやー怖か怖か。と言いながら再度寝転がるコイツは中々神経が図太い奴だと思う。さて、どうしたものかと辺りを見回すと木をヨジヨジと登る蜘蛛を見つける。

「千歳、蜘蛛」

その言葉を発したと同時に、千歳の体が木の下から俊敏に退けぞいた。バッバッと自身の体をチェックしている所が、これまた可笑しくて笑ってしまう。

「ほら、ここで寝よったら蜘蛛来るで。練習行こや」

手を伸ばすと、俺より大きな手がギュッと握る。握られた手が温かくて、どこか安心する。よいしょと反動を付けて立つ様子におっさんくさいな、と思ったが口には出さなかった。
立ったのを確認して、手をほどこうとしたが、離れなかった。立たせる為に伸ばした手は、なぜかぎゅうっと握られていて、思わず握られた手と千歳を交互に見てしまう。

「えっ…と、千歳さん?」
「なんね?」
「なんやねん、この手」
「手、繋いどってくれたらちゃんと行くばい」

な、とニコリと笑われれば、別に悪い気もしないしいいかとなってしまう。つくづくこの男には甘いと思う。しかし、さすがにコートにいるみんなに見られるの恥ずかしいので、数分の距離を歩くだけなら、と念を押した。

「謙也はなんで俺が居るとこが分かっとう?」
「ただの偶然やろ」
「ただの偶然で見つかっとうなら、みんな俺を見つけったい」
「?…つまり何がいいたいねん」

隣で良く分からないことを語る千歳を見るとふんわりと笑い返された。

「赤い糸でつながっとう」

は?思わず間の抜けた声が漏れる。前々から変わった奴だと思っていたが、ここまでとは思わなかった。ジブリが好きだったり、ちょっと可愛らしい一面を持つことを知っていたが、まさか少女漫画もビックリなメルヘン脳を持つとまでは思わなかった。別にメルヘンチックな脳を持つことを馬鹿にしているわけではないが、ただこれだけは理解してほしい、俺は男だ。

「謙也は赤い糸を辿って俺んとこ来とうよ」
「いやいやいや…絶対ない」
「この世に絶対なんかなかよ、謙也」

屁理屈だと思いつつも押し黙ってしまう。大体、俺と千歳が繋がってなんの意味があるんだと問い質そうとしたが、それは千歳の唇によって遮られた。
一瞬、何が起きたのか分からず瞬きを一、二回して間近にある千歳を見ると、してやったりの顔で笑っていた。

「なっ…」
「あー!!千歳と謙也が手ぇ繋いどるでー!!!」
「あ、ほんまや!なんしとんねん、きしょいぞー!」
「せやね。ほなユウ君もアタシから離れてや」
「見つかったんか?」

わらわらと集まって来るレギュラーに驚いて、繋がれた手を勢い良く振りほどいた。さっきのは見られて無いだろうか、と第一発見者の金ちゃんを見るが手を繋いでいたこと以外には特にリアクションを起こしてなく、良かったと安堵の息を吐いた。

「謙也、熱あるんとちゃう?顔真っ赤やで」
「へ!?」

白石が額に手を当ててて心配そうに此方を伺っている。顔が真っ赤という言葉に過敏に反応してしまい、隣の加害者がクスクスと笑っていた。

「お…れ、ちょい走ってくる!」
「あっ謙也」

白石の手を避け、熱が冷めるまでとにかくがむしゃらに走った。


(ああ、クソ…赤い糸なんて引きちぎったる!)










「おい、千歳」
「ん?」
「あんま調子にのんなや」
「やっぱ怖かねー、白石は」






end









リハビリがてらに千謙書きました!千謙なのかなこれ!と思っているでしょうが、千謙で…す!
とりあえず千謙好きです(^q^)
最後に白石を入れてしまうのは、やはり白石に脳を侵略されてるからだとおもう。(蔵謙的な意味で)





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